英語も話せないし飛行機も苦手、それでも個人手配で海外旅行

交通費嫌い。飛行機は苦手だけどヨーロッパ大好き。空港ラウンジ目的でSFC修行済み。休暇の取れない勤め人。

【香川】2日目-4 アートの島を巡る旅 直島「家プロジェクト」ツアー

2021年(令和3年)10月

 

緊急事態宣言が解除されました。ANAマイレージが余っているので、活用中。今回は、英語講師に勧められたアートの島を巡る旅を計画しました。当初、オリンピック時の3連休を利用する予定でしたが、たぶん暑くてバテるだろうと秋まで待っての出発でした。満を持しての今回は、直島・豊島・犬島の3島を回るため、ベネッセに泊まる1泊2日のツアーに参加しています。

前回は、直島の家プロジェクトからガラスの階段を持った護王神社八幡神社をご紹介しました。

fuwari-x.hatenablog.com

 

意表を突かれた神社の美しさに、ほかの家プロジェクトへの興味が膨らみます。家プロジェクトとは、この本村地区において1998年より始まったベネッセ主導のアートプロジェクトで、現在7軒が公開されています。今も生活が営まれる地域で、点在していた空き家などを改修し、人が住んでいた頃の時間と記憶を織り込みながら、空間そのものを作品化しているのが特徴です。

 

家そのものを地域に溶け込ませたままでアートにする。いったいどういうことなんでしょう?まずは、ANDO MUSEUMに入ります。この暖簾は染色家加納容子の作品で、その場に合った暖簾を掛けるという暖簾プロジェクトのひとつです。この暖簾は柿。

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ベネッセの先代社長福武哲彦が直島に子どもたちのキャンプ場を作りたいという想いから始まった直島文化村構想は、哲彦急死後、長男の總一郎が引き継ぎます。建築家安藤忠雄と意気投合して直島国際キャンプ場を作ったあと、ミュージアムとホテルを融合させたベネッセミュージアムを作ることになりました。その構想が収められているのがこのミュージアムです。

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元の木造建築を活かしつつ、安藤忠雄が得意とするコンクリート建築を融合させたANDO MUSEUM、上部は梁を見せています。

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安藤忠雄が直島で手掛けた、ベネッセミュージアムをはじめとする建物の構想過程が展示されています。

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建設過程の写真がこちら。いったん山を切り開いて建物を建てたあと、埋め戻すという作業が行われました。

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ほぼすべて地中に埋められた建物は、外からほとんど見えません。海上から見たときに近代建築で景観を損ねない工夫だと聞きました。

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構想時の模型では、その断面が表されています。これらが埋め戻され島と一体化しているのです。

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天然光を取り入れるという手法は安藤忠雄の得意とするところで、その代表作のひとつである大阪の光の教会も紹介されていました。

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時間によって光がどう差すか検討を重ねた設計であることが、撮影時刻を見ることでわかります。

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ANDO MUSEUMでも光の演出がありました。門を入ってすぐに、こんな仕掛けがあります。

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地階へ下りていくと・・・

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真っ暗な空間に、先ほどのガラス部から取り入れられた光が差し込む部屋が作られていました。

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光の演出という点では、次に行った南寺には驚かされました。お寺があった場所に建てられた建物なので南寺と名付けられていますが、これは前回の護王神社とは違いお寺ではありません。安藤忠雄には珍しい木造建築です。

中はアメリカ合衆国現代美術家ジェームズ・タレルの作品で、一度に入れるのは20人程度。どんなアートかあるのかわからずに待っていたのですが、係の人の誘導で壁を伝いながら真っ暗の部屋に入って行き、その声を頼りにベンチに座ります。閉所・暗所恐怖症の私には拷問のような話。それでも戻ることもできないのでじっと待っていると、やがて目が慣れて光のスクリーンが見え、室内を歩けるまでになるのです。天地も空間も認識できない中に身を置かれ、宙に浮いているようにすら感じられる不思議な感覚は、体験してみないとわからないだろうと思います。

この人の作品はあとにももう一度体験しますが、でも、これがアート?こういうのもアートと言うの?なんとも妙な感じです。

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町にはあちこちに工夫を凝らした演出があります。ここで電話をしながらポーズを取ってみたり・・・

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彼女たちと一緒にバスを待ったり・・・

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昔あった屋号がわかる家には、その屋号を掲げてあったりもします。

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横から見ると、光を通して文字が映し出され、柔らかい雰囲気が素敵。

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コロナによる休業で見られなかったThe Naoshima Plan「水」(三分一博志)の作品は、白砂の中庭を水盤として利用するもので、体験してみたかったひとつです。

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次の作品は角屋。200年ほど前に建てられた家屋を、漆喰仕上げ、焼板、本瓦を使った元の姿に修復しています。

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中へ入ると、畳があるべき場所が水盤になっており、灯りが燈されています。

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灯りには数字が記されているのですが、1~9の数字を順にカウントするようになっています。そのカウントのスピードをどうするかは、公募により参加した直島在住の5歳から95歳までの島民125名が参加し、思い思いのスピードに設定しました。この角屋は、島民も参加したことで、現代アートを地域や島民の生活に根付かせた家プロジェクト最初の作品です。このタイムセッティングは、最初に発表されてから20年後の2018年に、タイムセッティング2018〜継承〜という取り組みでそれぞれが再セッティングしています。ご興味があれば読んでみてください。

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このアーティストの作品はデジタルカウンターを用いたものが多いのですが、0を表示しないのが特徴です。

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仏教の輪廻転成の思想に影響を受けており、LEDが刻む数字を個々の生命の時間であると見立てています。1から9へと時間が進み、また1へと戻るというのは、生と死の永遠性を表現しているのだそうです。

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ツアー参加者のひとりが希望し、見学ルートに予定されていない家プロジェクトを見に行くことになりました。その建物は町役場の向こうにあるのですが、直島の公共建物の多くは、安藤忠雄が直島プロジェクトに加わるまで主に石井和紘が設計していました。こちらの庁舎も安土桃山時代の名建築の意匠が採用され、近代的なものと融合させています。直島町の幼稚園~中学校の建物も同じ設計者石井和紘によるもので、そののびやかでモダンな建物は豊かな感性を育むような素晴らしい校舎でした。

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少し離れた場所に立つこの建物ははいしゃと呼ばれる建物です。

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以前歯医者だった建物で、この奇抜さはあの直島銭湯「Ⅰ♡ 湯」を作ったと同じ大竹伸朗によるもの。大竹はこの建物を舌上夢/ボッコン覗と名付けています。

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ガラス張りの入口で靴を脱いでから入ります。以前は内部の撮影は不可だったそうですが、要望が多く解禁になったそうです。

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床にはガラスが張られ、その下のコラージュはいったい・・・???

作品タイトルの舌上夢という言葉は、何かを口にしているとき、味や匂いなどの感覚からたどる夢の記憶のプロセスを表現しています。これらのスクラップもそれを表したもののよう。

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左の部屋は、真っ暗で凹凸があります。それをボッコン覗と表現しているんでしょうか。あとで外から見るとその姿がわかります。

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右の部屋は青く塗られ、天井をぶち破って2階が見えます。

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階段を上がって2階から部屋を見下ろしてみましょう。

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1階から見上げた障子のところから吹き抜け部分を見ると、かつてあった窓がそのまま残されています。

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隣の部屋には自由の女神のパロディ版。こんなもの、1階で見たっけ?

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ええ、ありました!黒い部屋の奥にすっくと立っていました。

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トイレにもスクラップがいっぱい。大竹伸朗っていったい・・・

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建物の裏側に回ってみると、黒い部屋の凹凸が外に飛び出していました。なんというか、鉄腕アトムとかそういった雰囲気に私には感じられたのだけど、船尾を表しているそうです。

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門のところには、歯も埋め込まれていました。銀歯もあって妙にリアルだったのですが、これは偽物だそう。実物を集めたかと思ったよ。

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はいしゃを見に行ったことで時間切れになり、ランチのあとの空き時間で行ったのがこちらの碁会所(須田悦弘)。碁会所とはその名のとおり、囲碁をするために島の人たちが集まった場所ですが、解説なしだとまったくわかりません。

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真ん中の通路を挟んで左右同じ大きさの部屋が並んでいるのですが、全体は撮れませんでした。

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右の部屋はこのとおりなにもありません。

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左の部屋には椿の花。

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庭に植えられている本物の椿との対比が狙いなんだそうですが、ふむ。あとで聞いたところによると、なにもない部屋に置かれている竹は、本物の竹ではなくアートなんだそうです。この人の作品はベネッセミュージアムで再会するのですが、その作品を見るとちょっと意味がわかるはず。

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食事は玄米心食あいすなおでいただきました。

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時間が押したせいもあって、店内は満員。

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食事は玄米ご飯と素朴なお惣菜のセット。肉魚なしでベジタリアンやビーガンもOK。ちょっとこの島で1,000円というのは高いようにも思いますが、直島を応援という気持ちでいただきましょうか。

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ツアー料金には飲み物も含まれていたので、物珍しさからオリーブサイダーを頼みました。でも、ご飯には合わないかな。

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午後からは、直島にある3ヶ所の美術館を見に回ります。

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