2022年(令和4年)8月
花山椒のしゃぶしゃぶを食べに再訪した割烹 茂幸、次回予約を鱧の美味しい8月にしてから帰りました。京都で修行されていたので、夏はやっぱり鱧!と思っていらっしゃる。大阪で生まれ育った私も、もちろんそう。近年では、こちらのデパ地下でもちょくちょく見かけるようになりましたが、それでも夏の風物詩のような陳列ではありません。ならば茂幸さんで夏を味わおう。
8月まで待ったのは、夏の本番がこれからの7月ではまだ身体の疲れも序盤なので、くたばりかけたころにしようと思ったのです。
ところが今年の東京は、8月に入ってからうだるような暑さがそこまで深刻ではありませんでした。高い湿度に耐えていれば済む程度。夏の暑さが大の苦手な私にとっては、例年より遥かに楽に過ごせました。
元気であれば、美味しい食事はより美味しい。代々木上原までやって来ました。
3年目を迎え、植栽もずいぶん馴染んできています。
食前酒のために12ヶ月分揃えられた酒器から、訪れた8月をチョイス。ヒマワリが金色に光って美しい。食前酒は、夏らしくさっぱりとレモンのお酒です。
まな板には、早速お目当ての鱧が出されました。茂幸さんでは、いつも淡路産の鱧を使うそうです。大分などのものは柔らかめ。淡路の鱧は筋肉質ですとおっしゃっていました。
鱧の骨切りをご披露いただきました!刃渡り40cmほどもある骨切り包丁でリズミカルに切っていかれます。「うちにある包丁でもっとも登場回数が少ないのに、もっとも高い包丁です」
飲み物は、黒ラベルでスタートです。
登場したのは螺鈿細工の美しい器。もしや!
「夏はお椀がわりに、これからスタートしています」とおっしゃったのは、前回もいただいたいちご煮。鮑のペーストの上に梅素麺と雲丹がたっぷり。お出汁をサーブしてもらっていただきます。
それぞれで食べるのではなく、雲丹の形がわからなくなるまでしっかり混ぜてください、とのこと。味を一体化させてこそ、より美味しくいただけるのですね。「お椀ですから、最後はそのままお椀に口をつけて食べ切ってくださいね」
続くは、時鮭(ときしらず)のフライ。カリッと揚がったフライが食欲をそそる!
しかも上には花山椒。お酢味のさっぱりした味で、夏の暑さを和らげてくれるよう。茂幸さんは本当に山椒の使い方がお上手です。
これはさっそく、日本酒に進みましょう。酒器を選びます。
おまかせで出てきたお酒は、酒一筋。岡山県赤穂市利守酒造の限定夏純米酒です。夏らしいキリッと酸味があります。
鰺のお造りと7種の薬味。辛味大根、行者ニンニク、茗荷、貝割れ、大葉、生姜、海苔と一緒にさっぱりといただく夏のいただき方。
鮎の茶碗蒸し。ん???「この季節になると、もう鮎はさんざん食べたという方がいらっしゃるので、ちょっと違うテイストに仕上げています」
身を卵と混ぜて茶碗蒸しを作り、頭と骨でお出汁を取っているとのこと。1人前で2尾の鮎を使っているという贅沢。苦味はまったくなく、でも鮎の味がしっかり感じられる一品です。
この日はここまで私たち2人きりでした。これまで一斉スタートだったので、あれ?と思っていましたが、個室も含めて残り3組は30分ほど遅れての開始。変わらず盛況の中をどなたとも会話しながら、気配りを欠かさないところはさすがです。
さて、炭火で炙られているのは鱧。落としや照り焼きではなく、違った鱧も味わってほしいとおっしゃる茂幸さんの鱧料理。
鱧に備えて、日本酒を飲み進めましょう。かつて伊勢志摩サミットで提供したという三重県名張市の瀧自慢酒造の中から夏の吟醸酒、瀧自慢です。
鱧の源平焼き。源氏と平氏の戦いが赤白に分かれての合戦だったことを受け、二色に焼き分けた料理を源平焼きと言うそうです。お醤油を塗ってこんがり焼いたものと、塩で味付けをした白焼き、どちらもカリッとしつつふわっとしたした味わい。白焼きはスダチが絞ってあります。
肝は食べられますか?と出していただいたのが、こちら。すっぽんなどを集めておいて、生姜やニンニクで味付けをしたもの。おこげの上に載せて酒の肴に。
ところでこのお皿は茂幸さんで最も高価なものとおっしゃっていました。どなたの作品なんだろう。
折敷が徳大寺盆に替わりました。ここからはこの宴も終盤戦という合図でもあります。まずは精進料理。右は目の前で鍋を振るっていらした万願寺のおかか和え。万願寺の唐辛子は鰹節によく合います。
左がトウモロコシの春巻きです。濃厚な甘さのトウモロコシが美味しい。
楽しみの二段重。小鉢が登場です。
上の段は、トマトのスープにジュンサイ。ほんのり、でもしっかりとトマトの味のする夏らしいスープに、種に見立てたというジュンサイが入っています。さっぱりしていて美味しい。枝豆も旨みの強いもので東北産。
下段はレタスお浸しをくるみと松の実で和えて。もうひとつが、インゲンとあお干しぜんまいの白和え。前にもいただいたことがありますが、インゲンが加わることでまた違った味わい。なんといっても白和え、好きだわ。自分では面倒でなかなかしないけど。
もう少しで終わりと知りつつ、これじゃ日本酒が足りない。続いて出していただいたのは、滋賀県愛知(えち)郡藤居本家の純米生原酒、旭日。彦根と近江八幡に挟まれた位置にある、琵琶湖近くの酒蔵です。滋賀県産環境こだわり農法米、玉栄100%使用のアルコール度数18%というお酒。これもまた夏らしいキリッとした辛口でした。
加茂ナスの冷たい田楽。白みそをなにかと強烈に混ぜていたのだけど、カスタードクリームと名付けられていたところから見て、卵白じゃないかと想像しました。クリーム状の田楽味噌の絡みがいい。
ご飯の前の最後の一品は、鰻と瓜の酢の物。炭火で照り焼きに香ばしく焼き上げた鰻の上に、瓜の酢の物を生姜とともにのせ、うざくのように仕上げた一品。この鰻の美味しさと言ったら、あぁもう近ごろ出会えない味!!!これぞ鰻!!!それを酢の物と併せてさっぱりいただくという贅沢。これはもう食べ終えたくないぐらい美味しかったです。
最後の炊き込みご飯は今回は1種類。私たちだけ先行したもんね。最後に大葉を大量に入れて仕上げた薬味たっぷりの炊き込みご飯。
混ぜるとよくわかります。大葉、茗荷、生姜、オクラが入っています。オクラというのが目からウロコ。炊き込んでしまうのもいけるんだ。
卵かけご飯にしていただくというのが、今回のいただき方。たぶん、2杯目にはいかない私たちに配慮して1杯目から勧めていただいたのでしょう。
ふつうにオクラを食べるときにも、卵を混ぜたりするもんね。合うのは間違いありません。炊き込みご飯に粘りのあるオクラの食感が、すごい新鮮。
卵もしっかり混ぜていただきます!!!
ラストの桃のシャーベットでは大サービスをしていただきました。ソーダをかけてサーブのはずが、この日はシャンパン。ちょうどグラスワインのオーダーが入っていたので、分けてくださったのでしょう。こういうサービスも嬉しいですね。
次回の相談すると、希望メニューなどとの兼ね合いで、随分先の予約となりました。正直、2ヶ月に1度ぐらいは顔を出したいぐらいです。しかも今回は特別な食材ではなかったため、通常価格。良心的だわ~
おまかせコース×2+黒ラベル小瓶+日本酒3種=42,955円
念のため、冷蔵庫に入れてくださいねと言われたお土産のおにぎり。翌朝、少し早めに出して、室温に戻してからいただきました。
お・・・おいしい。翌日もやっぱりオクラの食感が好み。そして、落ち着いたあとは茗荷や大葉も主張し、また違った味わいとなりました。
カウンター内で料理を進行していくので、ちょっとしたことでお人柄なども見えるので、難しいものだと思います。今回のように、複数進行の超忙しい中、笑顔を絶やさずおもてなししていただき、ありがとうございました~
今回の目からウロコはなんといってもオクラを炊き込みご飯に入れる!そして茗荷も炊きあがった後じゃなくて、炊き込んでしまうところも。
この夏、幾度となくバリエーションをかえて試しました。鱒のほぐし身と合わせたり、生姜を大量に入れてみたり。お弁当用には1合しか炊かないので、細々育てていた家庭菜園のオクラがたった1本のときでも活かせてよかったです。