2024年(令和6年)11月
定期的に訪れる代々木上原の「割烹 茂幸」さんへの9回目の訪問。ミシュランも獲得されて予約が取りにくくなっているので、6月にお邪魔した折、次回予約をしています。行ったことがない月を模索して、今回は11月に伺いました。
前回はまだ日の高い時間帯だった18時も、11月になるとすっかり夜の顔。

刈り込まれた樹木は、すでに新年に向けて準備を始めていると言えるかもしれません。月が明けると師走、ますます多忙を極めることでしょう。

この日のカウンターは思いのほかすっきりしています。いつもなら下拵えされた食材が並んでいるのだけど。

久しぶりに杯を撮らせていただきました。京漆器 象彦の1月から12月の杯を先着順で選択させてもらえます。

私は娘の誕生月の11月を選択。食前酒の金木犀のお酒が注がれます。ほのかに香るわ~

スタートはいつも通りサッポロ黒ラベルの小瓶から。

茶碗蒸しからお料理の開始です。伊勢崎の甘久郎(かんくろう)牛蒡を具材に、鱈の白子餡をかけて仕上げられています。この牛蒡はあく抜きしないように注意書きがあるそう。やわらかく香り高い牛蒡です。私、この伊勢崎というのを毎度行ったこともない伊勢佐木町と混同してしまうの。

敷かれている漆器も杯と同じ象彦のもの。同じ葉っぱを購入しても色が違うんですって。意図的なのか、単にロットが違うのか。使い方がまだうまく掴めていなくてとおっしゃっていましたが、前回にも素敵にお目見えしていましたよ。

続くは北海道の鰤のタタキ。さっきまで炭火で丁寧に炙られていたわね。行者にんにくの醤油が塗られています。鰤も北海道産が出てきました。どんどん北上していくわね。でも北海道の人はやっぱり鮭が欲しいから、困っているんだそう。そのうち石狩鍋も鰤が入るようになるのかも、なんて話をしました。山わさびでいただきます。トッピングの海苔もまた利いていたわ~

お椀が登場しました。いつも開けるときのワクワク感が好き。茂幸さんのお椀は一工夫どころではない魔法が詰まっていると思うのです。

今回も秀逸。食糧難の時代、料理人として乾物も上手に使っていきたいと前回おっしゃっていました。これはその試行錯誤の中から生まれたものでしょう。お出汁は大豆、割り干し大根、煮干し、昆布、鰹節から時間をかけて丁寧に取り、具材は芋茎(ずいき)、大豆、そしてなんと揚げたふかひれ。ふかひれは濃いめの出汁に漬けてから揚げてしっかり味を出しているという手のかけ方。私は今回の最優秀賞はこの一品にしたいです。

日本酒は控えめに行きましょうと相棒には言われていました。コース料理がいくらなのか知りませんが、ここもすっかりセレブ向けのお店なのよね。通い続けるには、若干節制も必要なのが我が家の実情。というより、好きに飲んで最後のほうになると味の記憶がなくなるのを避けようという意図もあります。

長崎のお酒です。そういえば長崎のお酒って知らないなぁと思って調べたら、記録し始めてからの購入履歴はありませんでした。平戸藩より許可を得て、1688年創業という福田酒造。海をイメージして昨年リリースしたという福海は微発泡らしいが、その味わいはすでに抜けていました。でも、日本最西端から届いた生酛造り、なかなか美味しかったです。


甘辛いタレの上に鰆の山椒焼き。これもまた丁寧に炭火で炙られた鰆。皮が一際香ばしい。これも美味しかったな~

鰆を食べ終えるかどうかというタイミングで、ひょいと春巻が出てきました。栗の春巻です。

趣向はその甘辛いタレに絡めて食べてね、と。このタレ、美味しいからどう食べ尽くそうかと必死で鰆に絡めていたの。でも、栗もほっくりと甘くてそのままでいただいても美味しくて、迷ってしまったわ。

さて。すっきりとしていたカウンターにドカンと載せられたのが本日のメインふたつ。香箱蟹と松茸です。そうなの、去年香箱蟹が食べたくて12月に予約したら、先月に終わってますと言われたんだったよ。

地方によって松葉ガニや越前ガニなどと呼び名が違うが、要はズワイガニのメスを石川県では香箱蟹と呼ぶ、でいいのかな。自分で食べるのには少々メンドクサイ。

それがこうしてきれいに捌かれて並べてもらえると、これぞ至福のとき。

生姜のお酢でいただく香箱蟹と手前には菊菜、蓮根や椎茸も入っていたはず。この酸味のある組み合わせは好きだな。

憧れていたのはこちら。やっぱりビジュアルが抜群だもの。今回は、香箱蟹の焼寿司に仕上げられています。

外子や内子とともに酢飯も一緒にいただくの。プチプチ感がいいわ~

日本酒は紀土に移ります。澤克典の弥七田織部の酒器も健在。あ、これ機内食のメニューに載っている和歌山のお酒だよね。キッドと連呼していたのでお酒セットの隠語かと思っていたら、このお酒の名前だったのか(笑

折敷が大徳寺盆になりました。この形式での提供が復活したのね。やっぱり気分が上がるわ~

今回、上段のほうが温かい料理になっているので、こちらからどうぞ、と。

下段には見知ったお料理もあります。好きな一品だな。

温かいものは白菜と梅を炊いたもの。かりかり梅なの。それと海老芋の赤味噌掛け。海老芋がほっくりとても美味しかった。

柿、小豆、粟麩と隠元のピーナッツクリーム和え。この柿はとろりと甘くてとても美味しかった。今年はうちでもはじめて自家製ピーナッツバターを作ったのだけど、白和えの代用などに便利で気に入っています。湯葉と辛みかいわれは前にもいただいた記憶があります。蕎麦の実が香ばしくアクセントになっています。

さて、もうひとつのメインの松茸は大振りの立派なものでした。でもたぶん中国産。前に松茸は中国産でいけると思っているという話だったものね。

大きさを活かした料理と薄く切った料理とが登場します。でも実は、相棒と私はちょっと残念でした。松茸に興味がないのに、高い価格設定になるのから避けたかったんだよね。でも、値上げしたので香箱蟹と松茸両方を提供できるようになりました、ですって。秋は鬼門だわ。
衣に味をつけてフライにした松茸。右側が松かさ。

左側が軸です。大将の腕にかかっても、私にはいまひとつでした。衣が勝ちすぎているし。

スライスした松茸は名古屋コーチンの治部煮に合わせて。名古屋コーチンも部位の違う胸肉ともも肉をいただきます。鶏肉は特に感動的ではありませんでしたが、ミンチにして豆腐と作られた飛竜頭がめちゃうま。

味変に柑橘も絞ってください、と。おお~ 激変!この「味変」って言葉、浸透しているのね。このあいだのデパ地下で老夫婦も言ってたわ。でも、テレビのない我が家では、こういう新しい言葉って入ってくる機会がないのよ。

お決まりの炊き込みご飯、今回は開始時間が同じの人がいたので、久しぶりの2種類。嬉しい~ 銀杏入りかやくご飯がひとつめ。関東でかやくご飯が通じるのか~と思って聞いたらやっぱり方言で、こっちでは五目御飯って言うのね。

もうひとつが焼きカマスご飯。娘の大好物が炙りカマス。美味しいのは間違いないわ。

まずはかやくご飯から。銀杏のほか、牛蒡、人参、薄揚げかな。もう少し味が落ち着いてからのほうが美味しいよね。自家製塩昆布を見て、そうだ作らなきゃと思い出しました。塩昆布はあまり好きではないのだけど、出汁を取るたびに冷凍庫に保存していたんだった。もうひとつの酸味ある山くらげが美味しかったな。

かき玉汁を侮ってはいけないよ。今日の料理から出てくるお出汁だと考えると、その美味しさは図抜けています。


焼きカマスご飯は、炊き立てでも焼いた皮の香ばしさが全体を引き締めて味わい深い。こりゃ、明朝が楽しみだな。

最後は洋梨のシャーベット。

量産だったとは思われるが、昭和程度にはアンティークなベネチアグラスという説明だったと思う。

次回は花山椒の季節にまた参ります。ほんとは、違うお店の開拓もしていないし、そちらへ注力を傾けようかとも思っていたのですが、止められないね。

翌朝のお楽しみ。炊き込みご飯のおにぎりです。

一晩経つと、かやくご飯の旨味がぐんと増していました。朝から3つ、ぺろりといただいてしまいましたよ。ごちそうさまでした。

コース料理+瓶ビール+日本酒2種=52,541円
今回、念願の香箱蟹に出会えましたが、母が無類の蟹好きだったこともあって、子どものころから蟹を食べる機会が多かった私。これを狙って訪れなくてもいいかなというのが感想でした。いや、美味しいのよ。でも、それよりも馴染みある食材がどう提供されるかにもっとワクワクしたいかもしれません。ちなみに相棒は、前半の魚2種が気に入ったそうです。