カタカナの名前は苦手で目もくれずにいましたが、ページをめくってみました。
ハプスブルク家とは遠い昔のことのように思いますよね。
でも、つい最近まで存命だった「皇女」の死の報を見て、作者は興味を持ちます。
彼女の生涯を辿ることで見えてくるヨーロッパ情勢。
これまでも、なぜヒットラーが台頭したかとても不思議に思っていました。
日本の政治でも、国民が強い指導者に熱狂的に惹かれることがままありますよね。
不況から立ち直れないでいる中、何かしてくれそうな希望を見出してしまって。
あの当時、ファシズム政権が多かったのはそういうことなのかもしれません。
ただ、服従されると調子づいてくるんでしょうね。
やがて、ヨーロッパ全体の征服を企みます。
あるときは騙しごまかし、あるときは武力で脅し、次々ドイツへ組み込んでいく。
ヒットラーの本性に気がついたときは、その獲物となってしまった国は、もはや1国では抵抗できなかったんですね。
どこかの援護がない限り、戦っても勝ち目はないわけです。
そして、助けを求めてもどこの国も及び腰だった。
一致団結していないと、東欧などは否が応でもソビエトにねじ込まれてしまう。
敗戦後、日本は比較的恵まれていたとこの本を読んで思いました。
沖縄には犠牲も負担も強いているけれど、基本的には復興にだけ目を向けていれば良かったわけですから。
片やヨーロッパ。
領土をどう分けるか、戦後補償をどうするか、結局、揉めに揉めるわけです。
ソ連は次々と東欧諸国を乗っ取っていくんですね。
オーストリア以外はすべて東側になってしまいました。
あの位置にありながら、なぜオーストリアは西側に踏み止まれたのか。
今また逆戻りする「自国ファースト」の広がりは、ヨーロッパをどこへ向かわせるのか。
これは遠いよその国のことではありません。
必ずまた私たちにも跳ね返ってくる。
国民が賢くあることもまた、国を守ります。
過去の教訓を生かすために歴史はあるはず。
政治に何も期待できないと諦め、無関心を決め込んでいてはいけませんね。
今の緊迫した世界情勢を重ね合わせて読むと、非常に意義深い本となりました。
興味がおありの方は、是非世界地図を片手に読み進んでみてください。
ヨーロッパを理解するのにわかりやすい1冊だと思います。