英語も話せないし飛行機も苦手、それでも個人手配で海外旅行

交通費嫌い。飛行機は苦手だけどヨーロッパ大好き。空港ラウンジ目的でSFC修行済み。休暇の取れない勤め人。

ハプスブルク家最後の皇女 【エリザベート】 塚本哲也

 
プラハブダペストを訪れたあと、欧州で何があったかとても知りたくなりました。
支配階級にあったドイツ人と、労働者階級のチェコ人。その後の民族自決によるドイツ人排除の動きなど、少し調べただけでは、到底理解しえなかったからです。
 
家にあった1冊、ハプスブルク家最後の皇女 【エリザベートを読みました。
歴史はすこぶる弱いです。
カタカナの名前は苦手で目もくれずにいましたが、ページをめくってみました。
 
 
このエリザベートは、宝塚歌劇団などで上演されているシシィと呼ばれた皇帝フランツ・ヨーゼフ1世の皇后エリザベートではありません。
その孫娘で、第二次世界大戦後まで生きていたハプスブルク家最後の皇女なのです。
 
ハプスブルク家とは遠い昔のことのように思いますよね。
でも、つい最近まで存命だった「皇女」の死の報を見て、作者は興味を持ちます。
 
彼女の生涯を辿ることで見えてくるヨーロッパ情勢。
なぜ第一次世界大戦第二次世界大戦は起こったのか、そしてEUヨーロッパ連合がなぜ必要だったのか、いろんなことがわかります。
 
これまでも、なぜヒットラーが台頭したかとても不思議に思っていました。
日本の政治でも、国民が強い指導者に熱狂的に惹かれることがままありますよね。
不況から立ち直れないでいる中、何かしてくれそうな希望を見出してしまって。
あの当時、ファシズム政権が多かったのはそういうことなのかもしれません。
 
ヒットラーは、はじめからあそこまで傍若無人ではなかったのでしょう。
ただ、服従されると調子づいてくるんでしょうね。
やがて、ヨーロッパ全体の征服を企みます。
あるときは騙しごまかし、あるときは武力で脅し、次々ドイツへ組み込んでいく。
ヒットラーの本性に気がついたときは、その獲物となってしまった国は、もはや1国では抵抗できなかったんですね。
 
ハプスブルク家あるオーストリアなどは、ヒットラーのドイツ、同じく当時独裁者政権だったムッソリーニのイタリアに国境を接し、スターリンソ連が背後に控えている。
どこかの援護がない限り、戦っても勝ち目はないわけです。
そして、助けを求めてもどこの国も及び腰だった。
 
  
 
結局、のちにEUができたのはソビエトへの対抗するには、ヨーロッパ全体を平和に保つことが必要だという考えからできたものなのでしょう。
先の大戦のように、ヨーロッパ内で英仏につくか、ソ連につくか、あの狭い中でバラバラなことをしてしまっては、結局飲み込まれて終わり。
一致団結していないと、東欧などは否が応でもソビエトにねじ込まれてしまう。
 
敗戦後、日本は比較的恵まれていたとこの本を読んで思いました。
沖縄には犠牲も負担も強いているけれど、基本的には復興にだけ目を向けていれば良かったわけですから。
 
片やヨーロッパ。
領土をどう分けるか、戦後補償をどうするか、結局、揉めに揉めるわけです。
ソ連は次々と東欧諸国を乗っ取っていくんですね。
オーストリア以外はすべて東側になってしまいました。
結局、東欧においてはヒットラーがいなくなってスターリンに代わっただけ。
 
あの位置にありながら、なぜオーストリアは西側に踏み止まれたのか。
今また逆戻りする「自国ファースト」の広がりは、ヨーロッパをどこへ向かわせるのか。
これは遠いよその国のことではありません。
必ずまた私たちにも跳ね返ってくる。
 
国民が賢くあることもまた、国を守ります。
過去の教訓を生かすために歴史はあるはず。
政治に何も期待できないと諦め、無関心を決め込んでいてはいけませんね。
 
今の緊迫した世界情勢を重ね合わせて読むと、非常に意義深い本となりました。
興味がおありの方は、是非世界地図を片手に読み進んでみてください。
ヨーロッパを理解するのにわかりやすい1冊だと思います。