2022(令和4年)4月
先日訪れた割烹 茂幸で、花山椒の季節はいかがですか?とおススメされ、その場で再訪を決めた私たち。楽しみにしていたその日がやって来ました。
桜の見ごろはそろそろ過ぎたという頃。

ほぼ時間ちょうどに到着すると奥さまが迎えてくださいました。お店のつくりからいくと、少し気にかけておけば道行く人の様子が見えるんですね。計ったようにドアが開いたので驚きました。一番乗りの到着です。

今日のお客さまは3組のようです。示された席から、前回と同じ場所を選んで座ります。明るい店内の雰囲気は、このご夫婦のお人柄が作り出すもので、とても居心地がいい。

カウンターには本日の食材が準備されています。そう。主役の花山椒が待ち構えてくれています。

思った以上に花山椒は繊細できれい。これだけ入手するとなると○○万円かかるそう。

こちらの魚はなんだろう?この黄色味がかった色はもしや・・・?

まずは瓶ビールから開始です。目の前の揚げたじゃがいものようなものも気になる。正統派の和食でじゃがいもって、あんまり馴染みがないような。ましてや揚げてあるって・・・興味津々。

食前酒のために12ヶ月分揃えた酒器が霧箱に入れてあるのを、前回もご披露いただいています。今回は訪れた4月をチョイス。桜餅のような香りのする桜のお酒が注がれました。桜の花びらがちらりと浮かんでいるのが見えます。

スタートはホタルイカの酢味噌和え。ホタルイカはボイルしたての温かい状態で提供されました。柔らかくぷっくりとしたホタルイカは絶妙の茹で時間。お馴染みの食べ方でも、全然味わいが違う。

さっさと日本酒に入ります。スタートに勧めることが多いという新潟県青木酒造の「鶴齢」純米吟醸。

続く茶碗蒸しは、ちょっと珍しい取り合わせ。

蛤のお出汁に蕗とわらびが入っています。山菜の味がよく効いてるのだけど、ちょっと勝ちすぎかも。

掬ってみると、ぷるんとやわらかい茶碗蒸し部分と具材を合わせた食感が楽しい。蛤の味をもう少し感じたかったかな。

明石の鯛のお造り。生海苔酢と薬味には独活と茗荷がのせられています。なかなか冒険しますね。淡白な鯛に個性的な味。

サクサクと日本酒も進みます。宮城県新澤醸造店の「伯楽星」。特約店のみで販売されている純米大吟醸で、究極の食中酒を意識してつくられたお酒です。その名は知っていても、なぜか縁のなかったお酒。嬉しい。

そしてこの酒器は、もう覚えましたよ。澤 克典 作だ~!前回のペンギンとはまた違って、カタツムリ?鳥?なんだろう?でも、めちゃかわいい。

さて、カウンターに用意されていた魚は果たして琵琶湖の稚鮎でした。徳島のスダチが添えられていますが、まずは絞らずに食べてください、と。おススメのとおり、スダチがないほうが美味しいかも。質のいい鮎なのでしょう、苦みも少なく川魚が苦手な人でもまったく気にならない、むしろ大ファンになるんじゃないかというお味。
お高いスダチももったいない。せっかくなので搾ったバージョンも食べてみましたが、スダチなしの方がやっぱり美味しいと感じました。

食べ終わった後のお皿は、カボチャの柄。食器にはまったく明るくありませんが、どこか見る楽しみのある器を選んでいらっしゃる。

続くこちら。残念ながら螺鈿が施された美しい蓋は撮り損ねました。ただ、季節は違うけれど同じ器が使われているこのお料理の記事を見つけました。ピンク色のきれいないちご煮にその場でお出汁をサーブしてもらっていただきます。

いちご煮とは青森の郷土料理で、この素麺の色を指すのではなく、鮑で取った乳白色の濁った出汁に浮かぶウニの黄金色が、朝露に霞む野いちごのように見えたことに由来しているのだそうです。そう、底に見えるのは鮑のすり流し。梅の素麺とその上には雲丹という贅沢なお料理です。なにもそんなに高級食材を混ぜなくったって、と思うかもしれませんが、どちらも負けていません。よく混ぜて素麺と共にいただくその至福。
このお料理は既に茂幸の看板メニューのひとつのようです。

折敷も変わって後半戦突入です。引き出しのついた二段重の登場。

引き出しを開けると、じゃじゃ~ん!ワクワクしますよね。

下の段は独活のきんぴらとうるいの胡麻出汁。我が家でも、季節になれば必ず食卓に登場させる春の食材。うるいの味は好みだなぁと思って声を掛けると、お弟子さん作だそう。「ほら、ちゃんと作っていればこうして評価してもらえるだろ?」
近ごろの若いお弟子さんを育てるのは、なかなかの苦労だそう。草食系が多く食いついてこないもんね。せっかくいいお師匠さんのお店に入れたんだから、頑張ってほしいな。

ところで、うるいってギボウシの仲間なんですね。日影に植わっているホスタともいう、あれ、です。調べて見ると、庭に植わっているホスタでも、葉がまだ開かない若いうちだったら食べられるみたい。へぇ~!!!

そして上の段は、野甘草(のかんぞう)と豆腐のたれ。これも、まずはたれはなしで食べてみてください、と。おお~ 確かに。そのものの味を楽しむ方が向いている気がする。さすればお豆腐はどうすべきか?そのまま単独で楽しんでもいいと教わったので、あれこれ試していただきました。

次に勧められた日本酒は宮城県川敬商店の「黄金澤」純米吟醸美山錦100%。はじめて見るお酒です。でも、全国新酒鑑評会で何度も金賞を受賞している名酒造のようですね。

京都の筍は炭火焼きで出していただきました。うちは筍LOVERです。そうそう、前に筍の下処理が悪かったお店の話を書いたことがありますが、ここではそんな心配はまったく不要。春の食材が次々出てきて嬉しい限り。

でも、そんな楽しみもそろそろ終わりの模様。今回のメインディッシュ、花山椒のしゃぶしゃぶが始まりました。いかにも美味しそうな牛肉が並んでいますが、お肉はそこまでこだわっていないんだそう。

グラグラと目の前でお鍋がそのときを待っています。山椒の入ったお出汁。嗚呼!

ひとりぶんずつ、しゃぶしゃぶ、と。噂に聞くお師匠さんの麻布幸村や、その店主が修行していたという和久傳から受け継がれてきただろう花山椒のしゃぶしゃぶ、どんなお味なんだろう?

たっぷりのせられた花山椒。口どけのいい柔らかいお肉と絡み合って、まぁなんという!!!そこまで山椒のピリ感は強くないので、山椒が苦手でも問題ないんじゃないかな。来てよかった。本当にこれを絶品と言わずしてなんと言おうか。
茂幸への取材記事をあれこれ見ていると、ふだんのコース+5,000円で花山椒のしゃぶしゃぶがつくと書かれていたのですが、充分その価値があると思います。←この日のコースがいくらなのか確認しないまま予約している

お料理もそろそろ終わることはわかっているのだけど、やっぱりお酒が足りない。もう1杯いっちゃいます。ラストのおススメは「智則」。島根県吉田酒造の「月山」のうち、中取純米吟醸無濾過生原酒が「智則」と名付けられているよう。前回のスタートのお酒がこれでした。

ラストはこちら、肉のない肉じゃが。カウンター上の揚げたじゃがいもをどうするんだろうと気になっていました。そして、大きくざっくり切って置いてあった春キャベツも。キャベツは炭火で焼いたあと、アルミホイルで包んで残り火に突っ込んでいました。それらを合わせて、しゃぶしゃぶの残りのお出汁をかけたのがこちら。お肉がなくても肉じゃがというのはそれゆえです。春キャベツがこんなに美味しいとは知らなかったし、じゃがいもの香ばしさもまた全体を引き立てていて、感動的な美味しさ。余すところなく花山椒も味わえて、堪能させていただきました。

さて、今回の炊き込みご飯は筍ご飯。

そしてもうひとつは、前回と同じウスイマメのご飯。あ、前回と同じでしたか!とおっしゃったので、できるだけ重ならないようにチェックしていらっしゃるのかもしれません。

どちらも少量ずついただきます。


かなりの量を出していただいていると思うのですが、変化に富んだお料理なので気がつくといい頃合いに食事が終わっているという感じ。途中で無理をするとか、逆に足りないということもなく、まさにちょうどいいところに行き着くところも嬉しい。

お茶碗も、はじめの酒器と合わせて同じ月のものが用意されているので、いつか制覇したいかも(笑


御湯呑みは辻村 隗 作だそう。以前行ったふしきののギャラリーでも扱っていますが、さりげなく出されているこちら、どなたのものか知ると持つ手が緊張するわぁ・・・^^;

デザートはいちごのシャーベットのソーダ割です。

ソーダで割ってさっぱりさせたシャーベットは食後にとてもいい。お盆はこれも最初の酒器に合わせて選ぶようにしているのかしら。前回とまた違うわ。

さて、大満足で終わった茂幸での食事ですが、もともとのコースのお値段も確認していなかったので内訳はさっぱりわかりません。でももし前回の食事が16,500円(サービス料のみ込み?)で合っていたとして、上記紹介記事のとおり花山椒のしゃぶしゃぶが+5,000円(+税サ)なのであれば、このあたりかと。
24,200円×2+黒ラベル小瓶+日本酒4種=62,315円(税・サ込)
うーん、前回のアルコール代から考えるともう1,000~2,000円お料理が高いかな?いずれにせよ、好きにお酒を飲んでこれぐらいに収めていただけるのは良心的だと思います。

炊き込みご飯のお土産も楽しみのひとつ。ただ、実は少し気になったことがありました。お店で食べていたときにも気になったのですが、相棒はわからないと言っていたので、私の味覚の問題かもしれません。詳細は伏せますが私の備忘録として。

もうひとつ、私たちふたりともが帰路に同じ感想を漏らしました。ちょっとしたことで感じられる自宅感がもったいないよね、と。ちょうど直前に行ったお店がビシッとしていたので、知らずうちに比べてしまったこともあるかもしれません。

だって、帰りには迷わず次回の予約をしているんです。私のほうがお店のコンセプトから外れた考えをしているのかもしれない、まだまだこの価格帯のお店の暖簾を気軽にくぐれない私たちが過分な目を向けてしまっているのではないかと考えあぐね、このレビューは幾度となく書き直しています。

再訪決定するほどの前提なら書いていいかも?という気持ちと、だったらそこは飲み込むべきか?という気持ちが未だ錯綜しています。いずれにせよ次回行けばはっきり決まるかと思うので、このあたりの感想はそれまでの備忘録とするつもりです。