英語も話せないし飛行機も苦手、それでも個人手配で海外旅行

交通費嫌い。飛行機は苦手だけどヨーロッパ大好き。空港ラウンジ目的でSFC修行済み。休暇の取れない勤め人。

【代々木上原】気持ちが明るくなる隠れ家「割烹 茂幸」

2022年(令和4年)3月

 

前回もちらりと触れた贔屓のブログで紹介されていたお店から、どうしても行きたかったお店第2弾、割烹 茂幸へ足を運びました。

決行するまでに少し二の足を踏みました。というのも、ランチ営業がないことと、その料金設定。今回は16,500円のコース一択で、1万円までで食べに行きたい私たちには、ちと高い。しかもそこでアルコールを飲めば、2万円ほどプラスになること必須。うーん。

 

でも、行っちゃえ!

そう思って電話してみると、翌々日の予約が取れてしまいました。たぶん、キャンセルあとに滑り込めたのでしょう。だってそれを逃すと月内は土曜日1日空いているだけっぽかったもの。ラッキーです。

食べログを見ると前回の天婦羅おばた同様、それぞれの口コミの評価は高いのに、なぜか表示では低めに出てしまう珍事。いやでも、これ以上予約が取りにくくなるのは困るし、知る人ぞ知るでいいんだけど。

tabelog.com

 

お店は小田急小田原線代々木上原から10分足らずの閑静な住宅地の中。(京王線幡ヶ谷駅からも同じぐらい)。今回も前回の地下店舗に続きヘビーなシチュエーション。住宅を改装したお店なんて、知らなかったら行きにくいですよね。見つけ出す手腕にも、それをシェアしていただけることにも感謝。

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迷子になるかと思って早めに出掛けたので、開店まであと15分もある・・・暖簾もないし、いくらなんでも早いよね。通り過ぎて、ちょっと散歩でもしましょうか。

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お店を曲がった向こうに、代々木駅近くにあるNTTドコモ代々木ビル(ドコモタワー)のライトアップが見えます。こんな位置なんだ。

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窓からは店内の様子が見えました。2020年4月、ミシュラン三ツ星店だった麻布幸村から独立した店主が、40年暮らしてきている生家を改装して始めたお店です。

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5分前、そろそろいいかな。暖簾はかからないのね。予約のみで営業しているから必要ないか。シンボルツリーの梅がちょうど細々と満開です。

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写真を撮っていいか断りを入れたものの、8席のカウンターには既におひとりお越しだったので、店内はあまり撮れませんでした。右に見える窓部分が個室になっており、最大6名で利用できるそうです。ただ、理想的には4名だそう。

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お好きな席に、と促されたので奥から二番の席に座りました。居心地のいい空間です。朗らかに話しかけてくださる店主。予約客の名前は覚え、名前で呼びかけてくれるので、皆が常連客の雰囲気。リラックスさせるのもお上手です。

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カウンターには、本日のお料理がいくつか準備されていました。器も素敵。

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メバルやワカメが下ごしらえされて出番を待っています。

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こちらは串刺しにされた肉とタケノコ。どんな料理になって登場するんでしょう。ワクワクします。

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まずは食前酒の案内から。酒器の入っている桐箱を披露していただきました。お店の様子を描いてもらったという話だったので、季節を彩る樹木がこれから時を経てさらに存在感を増していくのでしょう。

お店のカウンター部分には店主と奥さまを模したおふたりも。戌年生まれだそうで、お顔は似顔絵ではなく犬。

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酒器は、右端から縦に1月から12月まで異なった柄になっています。最初に案内していただいたので、せっかくなので誕生月の9月を、相棒は3月を選びました。

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9月はお月さま、3月は椿なのかしら。食前酒は白酒。

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「かなりの量を出しますので、多ければおっしゃってくださいね」と声を掛けられました。実は、いつもより昼に食べ過ぎており、ちょっと自信のないはじまりでした。完食できるかな?まずは黒ラベルの小瓶から飲み始めます。

鮎の稚魚、氷魚(ひうお)と蕗の和え物。トッピングはフキノトウ米粉をまぶして揚げたもの。これが香ばしくて効果的。

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ビールを終えて、日本酒スタート。生酒は1種類だけありました。島根県吉田酒造月山のうち、中取純米吟醸無濾過生原酒は智則という別名がついているようです。

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ここの酒器がまた素晴らしい。こちらは澤 克典の作品。滋賀県信楽出身ですが、信楽焼だけでなくこうして織部なども取り入れている陶芸家です。去年行ったふしきののギャラリー(最後の画像の左端)でも扱っていました。

fuwari-x.hatenablog.com

 

絵付けが瀟洒な弥七田織部、内側に描かれたペンギンがキュート。

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お猪口は毎度こうして選ばせてもらえます。

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私が選んだ左側のものは、地味な色の割にキラキラと反射してお酒が映えるお猪口でした。

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カウンターに用意されていたメバルとワカメでお吸い物。芸術的に美しく切られた針生姜がよく効いています。薄味のお出汁が素材の味を引き立てます。

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続くは三点セットで。

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左から、赤貝のぬた。土筆の頭がそうっと載せられており、春を感じさせます。

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平目の肝和え。とても美味しいのだけれど、水分がゼロで舌にちょっとモチモチしすぎかも。それともそれこそを狙ってる?

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海鼠。金柑が入っていて、その酸味と苦味がよく合います。

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お酒は銘柄を尋ねない限りはおまかせになっていまうかも。次に勧められたのが秋田の雪の美人。先ほどの智則に比べぐっと辛口です。この無骨な酒器も素敵~ これ、絶対に見たことがあるのだ。でも探し出せなかった(涙

このお店では、名のある食器類を惜しげもなくお使いで、同席された方のおひとりがとても詳しく、藤ノ木土平辻村史朗、そのご子息の辻村塊、宮内庁御用達の山田平安堂漆器など、店主と話が弾んでいました。きっとここに出てくる中にも、見る人が見ればわかる食器が含まれていることでしょう。

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金目鯛のしゃぶしゃぶ。目の前にあるカウンターでひとり分ずつ調理してくれていました。見せる演出がとても上手です。

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鰆と花山葵。海苔の香りも効いています。

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河豚の白子の唐揚げ。花山椒のタルタルが抜群に美味しい。去年残った花山椒を漬けておいたそうで、酸味の効かせた絶妙の味は筆舌に尽くしがたい美味しさ。これをいただいたときに、このお店のリピを決めました。

というのも、4,5月の花山椒の季節は出身店の麻布幸村でも有名な花山椒のしゃぶしゃぶが出されるのです。麻布幸村の店主は京都の室町和久傳のご出身で、ここも花山椒の料理が有名。きっとここから脈々と花山椒の料理を受け継いできているのでしょう。

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日本酒はまたもや島根の月山、今度は純米吟醸が提供されました。なぜか月山がイチオシ。

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鶉のタレ焼きと鹿児島産筍。串に刺して置いてあったのはウズラだったのですね。1羽で4人分ほどの小さな肉だそうで、旨みが強くタレによく合う。焼き筍との組み合わせもいい。このウズラは、相棒ともどもとても気に入りました。

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ここでお膳が丸盆変わります。

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カウンターでは次の料理の準備中。ほとんどこちらで調理されるので、見る楽しみもあるのです。そして、見せながら4組の客人にうまく話題を振られ、さらに居心地の良さが増します。なんといっても、店主の朗らかさに気持ちが明るくなるのが嬉しい。

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2人分ずつ運ばれてきたのがこちら。2段のお重に2人分ずつ納められています。ワクワク感ハンパなし。

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下段から、あお干しぜんまいの白和えはまぼうふの白和えとおっしゃったかと。はまぼうふは海岸の砂地に自生するセリ科の植物のよう。

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ぜんまいの白和えが入っていた器は、七福神。こんなところにも楽しみが見つけられます。

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上段は、ずいきの小豆梅餡せりと椎茸のポン酢浸し。ずいきの淡白な味に、小豆の入った梅餡がとてもいいアクセントになって感動もの。せりも香りが大好きな一品。

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お料理も最後に近づいてきたようです。

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蓋を開けると、鴨饅頭。ゆり根と海老芋が入っています。からしが効果的!鶉のタレ焼きといい、こうした濃厚なお味もお得意なようです。

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あまりに鴨饅頭が美味しいのに、お酒が足りない。無理を言ってグラスに日本酒をもう1種類いただきました。高知県司牡丹の一蕾(ひとつぼみ)。地酒専門選抜店でしか取扱いのない限定流通商品。

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カウンターには土鍋が並べられています。4組の客人に3つ?

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なるほど。全種類違う炊き込みご飯が用意されていました。

うすい豆のご飯

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穴子と根三つ葉のご飯

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牡蠣ご飯

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希望のご飯からよそっていただけます。私はうすい豆から。

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あとの2種類も少しずつ。

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お茶碗は、はじめに選んだ盃の月と同じ月のものでした。こんなところにまで気を配っているとは。

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どこまでも粋な計らいですよね。

食べきれるか心配だった食事も、どれも美味しくて、ここの雰囲気も温かくて、終わってしまうのが名残惜しい。

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デザートは、デコポンのシャーベットのソーダ

シュワシュワっとシャーベットがソーダに溶けて爽やか。子どものころに好きだったクリームソーダからの発想だとおっしゃっていました。そんな目の前で繰り広げられる演出も楽しい。

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ここでもお盆はそれぞれ違っていて、相棒は三日月と松。(だよね?)

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カウンターでは、残った炊き込みご飯をおにぎりにして並べています。え?お土産にしてくれるの?(それにしてもこここの器、どれも気になる)

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お代わりをした人としなかった人とで、個数もそれぞれ。なんのご飯が当たるのかな。翌朝いただくのを早くも楽しみにしてしまいます(笑

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花山椒の時期に予約を決めた私たち、ほかの人たちよりも少し遅れて店を後にします。お土産のおにぎりを手渡され、見えなくなるまで見送っていただきました。奥さまの気配りも明るさも店主と同じで、お店の雰囲気の良さを作っていました。若いスタッフもオープンカウンターで緊張の連続のはずですが、てきぱきよく動きます。

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我が家に連れて帰られたおにぎり。私、知らなかったんですけど、この紐は竹皮の端をシューッと割いて括るんですね。別に紐があるのだとばかり思っていました。

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穴子がふたつと、牡蠣とうすい豆がひとつずつ。さらに味が落ち着いて美味しさも増していました。翌朝まで楽しめるなんて、こんな楽しいことはありません。

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花山椒の時期はお値段がぐんと高くなるそうで、相棒にその話を事前にしたうえで伺いました。もし、気に入ったなら予約しようね、と。速攻、リピが決まって楽しみです。

 

なお、今回のコースは予約時に16,500円と言われた気がするのですが、一休を見るとサービス料込み、税抜き価格かも。いずれにせよ季節によって異なります。

16,500円×2+黒ラベル小瓶+日本酒4種=43,560円(税・サ込)

 

定休日は不定休ですが、水曜日にしようかなぁと考えているところとおっしゃっていました。今のところ、予約は電話のみ。ご参考までに。

restaurant.ikyu.com

 

番外編

美味しい食事のあとにご不浄で申し訳ない。はじめて見るタイプに驚かされました。ここまで来たか!もちろん自動で開く便座のふた。その便座の形状にも注目。奥がたっぷりとってあるのは見かけないフォルムだし、なんだかゴージャス。TOTOネオレストNX、ここまで美しいディテールは最上級モデルに違いない。

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リモコンも、ワンランク上。こういうところにも気を配るお店は絶対いいお店だと確信します。

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2部制だなんてとんでもない。1回転で精一杯です、と全力投球の店主。たっぷり2時間半、最初から最後までこちらもテンションMAXで楽しみました。ごちそうさま。