2023年(令和5年)8月11日(金)
去年娘が旅行したアイスランドを訪ねる夏の旅。前回はゴールデンサークルツアーのゲイシール地熱地帯を訪れ、ストロックル間欠泉を見学した話を書きました。
ゲイシール地熱地帯から10分ほどで、ゴールデンサークル最後の見学場所に到着しました。相変わらずショップはスタイリッシュだけどシンプル過ぎて存在感が少ない。
このだだっ広い平原に何があるのでしょう・・・
おお~ これですか!水の豊かな国、アイスランドでは、雨だけではなく雪や氷河といった形でも豊富に水を有しているので、美しい滝が各地に存在しています。その中でも一番人気と言っても過言ではないのが、このGullfoss(グトルフォスの滝)。
轟音が聞こえてきますが、ここからではまだ全貌が窺えません。さらに階段を下りて近づきましょう。画像下に記念碑が見えるのですが、これを正面から見るのを失念していました。あとでご紹介します。
轟々と水の流れる音が聞こえ、その姿を現しました。三角形に飛び出す縁から両側に水が流れ落ちています。
その水量の豊富さと独特のシルエットがとても印象的。
娘から届いた画像では、特徴的なシルエットが印象的でしたが、その大きさまで感じることができませんでした。でも、人物と比較するといかに大きい滝かということが少し想像できます。
すぐ近くまで近づけるところもまた魅力。
突き出した岩盤が天然の展望台になっています。
すぐそばに1段目の滝が流れ落ち・・・
さらにその先で2段目の滝がその割れ目に流れ落ちていて、落差は32m。
展望台に到着する直前でその割れ目を見てみると、白煙を上げて落下する様子がよくわかります。
展望台は通常とても風が強く、飛沫もかなり飛んできて滑りやすいそうです。この日は問題ありませんでしたが、万一、落下すると遺体も上がらないと言われているそうです。
展望台から見る2段目の滝は、滝を上から見下ろす形になるので、落下している状態を見るよりは谷間に吸い込まれていくだけに見えます。
反対に1段目の滝を見ると、落差は少ないものの、その水量の多さでかなりの迫力があります。でも、柵はごくごく簡易なので気をつけましょう。
さて、はじめの方で記念碑の話を書きましたが、この滝は20世紀は地元農家のTómas Tómasson(トーマス・トーマスソン)氏の私有地でした。(ちなみに、アイスランドでは本来名字がないそうです。だから、大統領に対してもファーストネームで呼ぶそう。トーマスさんはトーマスさんの息子だからトーマスソンという名字をつけたに過ぎないと推察します。)イギリスの投資家が水力発電を建設しようといくつかのアイスランドの滝に目をつけたのですが、そのひとつがグトルフォスの滝でした。トーマスソン氏の娘、シグリズルはとりわけこの滝を気に入っており、ここを訪れる観光客にガイドをしていたほどでした。そのため彼女は水力発電の建設を反対しますが、父親は契約を進めてしまいます。
彼女は全身全霊で水力発電の建設に抗議します。ある日彼女は、ここからレイキャビクまでの200kmの泥の道を歩いて抗議しました。そのころは今と違い道もなく、橋もありません。またあるときは「どうしてもこの場所に水力発電を建設するというのなら、私は滝に身を投じて死ぬ」という強硬手段にも出ました。こうしたことから多くのアイスランド人たちが注意を向け、批判が相次いだこと、投資家たちも資金が十分でなかったことから、シグリズルに協力的だった弁護士が取り次ぎ、水力発電所計画はようやく白紙となりました。シグリーズルの弁護士、Sveinn Björnsson(スヴェイン・ビョルンソン)は、1944年にアイスランド初代大統領に就任しています。
スグリズルの行動により、すべてのアイスランドの滝が投資家から守られることとなり、彼女は今もアイスランドで最初の環境保護主義者として認識されているのだそうです。
さて、上にある展望台も足を運びましょう。
この階段のすぐ右側にシグリーズルの記念碑があったのに、残念。
まずひとつ目の展望台があります。
ここから見下ろすと、滝のそばへ行く道がより分かりやすい。人との対比でグトルフォスの滝がいかに壮大かがわかりやすいと思います。
まだ先にも展望台が見えます。
先の展望台を振り返って見ると、突出して作られていました。
冬のあいだは下の道が凍結しているので、上にある展望台から見学するのだと思います。
遊歩道に柵などは設けられておらず、ロープを張っただけの箇所にDANGER!とだけ立札が。ここからがもっとも滝壺への落下が見えやすいと思いました。
そして、このサイズの画像では気づかないと思いますが、実は対岸にも人がいるのです。対岸にも遊歩道があって、向こう側の滝壺にかなり近づけます。ちょうど1段目の滝の先端あたりの上に人影がありました。
滝に向かう川は滔々と水を湛えているものの、あそこまでダイナミックな滝を形成するとは思えないのは、どこの滝でも同じかと思います。
奥にある展望から、下にある展望台を見下ろせます。
冬に来たらたぶん、あそこから見学できたらいいなぁと思う位置にあることでしょう。でも、冬の氷瀑も美しいだろうな。
駐車場は下にもあり、より滝に近いところへも停められます。観光客が多いといっても、ほどほどの数なのはコロナ禍からまだ完全復活していないためか、ここの土地柄かはわかりませんが、落ち着いて観光できるのがアイスランドを通して感じられる良さでした。
予備知識がなければ、こんなところに壮大な滝があるとはわからないような平原。こうして見える景色のどこかにも、何かが隠されているのかもしれません。
北海道と四国を合わせたぐらいの面積に、中核都市ぐらいの人口しかいないアイスランド。自然エネルギーを活かし、しかも軍隊を持つことなく近隣国とうまく付き合うことで生き残っている国です。日本も同様の島国で火山国であるならば、見倣うべき資源活用も外交ももっとあるように思います。
バスに乗り、帰路に向かいます。グトルフォスの滝の下流。
馬の放牧地を通り・・・
途中、キャンピングカーの大集合を見ました。アイスランド一周を観光するなら、キャンピングカーをレンタルしてまわるのが最適ですよね。
そして、この駐車場を通ったときピンときました。娘の参加した英語ツアーでゴールデンサークルを回ると火口湖に寄れるのですが、たぶんここだろうと。
これです。すり鉢状になったその下にあるケリズ火口湖。下へ降りて火口湖のまわりを歩くこともできるようです。グトルフォスの滝と同じく、ぱっと見ではわからないところに隠されている美しい景色。傍を通るんだったら、私だって行きたかったよ。
多くの滝が川を作るアイスランド。これがグトルフォスの滝の下流かどうかはわかりませんが、曇天なのが惜しい美しい川でした。
唯一、交通渋滞に引っかかった箇所がありました。10分ほどで抜け出しましたが、なんか新鮮(笑
最後に、晴れ女の娘が見たグトルフォスの滝をご紹介します。虹の架かる美しく壮大な景色。私も同じ風景を見ることができて嬉しかったです。
ゴールデンサークルツアーを終えたら、あとは夜中発のフライトで帰国です。普通、帰国日のツアー参加は難しいですが、このツアーは半日程度で終了するので参加可能。15時半過ぎにはレイキャビク中心部に戻れたので、多少の遅延があっても大丈夫かと思います。