2022年(令和4年)2月
しばらくお酒の備忘録を続けるつもりでしたが、こんな時期、楽しい話を先にお送りすることにします。
お気に入りのブログを読んで、ここへ行こう!と旅先やレストランを候補にする人はきっと少なくないと思います。あんまり紹介し過ぎるのもかえって失礼になってはいけないので今回はあえてその名は伏せておきますが、私にも絶大なる信頼を寄せているブログがあります。
今回は、その中でももっとも行きたかった天婦羅おばたへようやく行けたので、紹介したいと思います。なにしろ品数が多いので、延々と続くお料理に驚かれることと思います。
処は銀座7丁目。私はいつまでたっても東京の地理に明るくなれないのですが、JR山手線なら有楽町駅か新橋駅、メトロなら銀座駅か日比谷駅あたりが最寄駅になるかと思います。
ランチタイムの予約のために銀座らしい賑わいがないというよりも、メインの通りから入った場所にあるので、ひっそりしているのでしょう。
付近では、軒並みラーメン屋さんに行列ができていましたが、それ以外のお店では夜の本番を前に前日のゴミが出されているような界隈。
しかも、お店は地下に位置しています。自分で開拓するなんて、不可能なお店。こんな場所に安心して出掛けられるなんて、紹介してくださった方に心底感謝です。
階段を下りてみるとまだ暖簾はかかっておらず、開店まであと10分。先にふたり連れ女性が一組待っていました。
ほどなく開店です。見てのとおり、この入口の中には天婦羅おばたと銀座 凛 にしむらの2店舗が入っています。にしむらもミシュラン東京一つ星の寿司の名店で、一休.comでは4.8の高評価を得ています。
扉の中は手前がにしむら。先にお待ちだったふたり連れは、こちらへ案内されていました。
私たちは、奥のおばたへ。
店内はカウンターのみで4名分用意されていました。別に個室もあるそうですが、私にはどこにあるかもわかりませんでした。
お好きな方にどうぞと勧めていただいたのでコーナーを陣取ります。できれば貸切にしたかったんですけどね~と、きさくに店主が話しかけてきてくれます。いえいえ、滅相もない。充分緊張しています~
部屋の隅には商売繁盛のお飾り。大阪では今宮戎神社の十日戎(or 西宮戎神社・京都ゑびす神社など)が一般的ですが、東京で商売繁盛といえばどこにお参りするんでしょう?
天婦羅鍋をカバーしている銅鍋が気になります。お菓子用の銅鍋を転用しているそうですが、それにしても大きい!!!
しばらくして、もう一組のお客さまも到着。ご夫婦でお越しでした。なにを見て来られたんですか?と尋ねられて「一休で」とのこと。「一休は高評価すぎて緊張するんですよね~」と店主がおっしゃいます。なんと4.9!!!
なぜか食べログでは低い評価ですが、口コミを見てみるとどれも高評価。ときどきこういう珍事がありますね。でも、店主はネットでの評価は見ないようにしているとおっしゃっていました。フロアスタッフが担当しているそうです。
飲み物のメニューはワインや焼酎などでしたが、私たちの希望は日本酒。日本酒だけは、見て選んでもらっていますと言ってスタッフさんが持ってきてくれます。おお~!
さらに四合瓶も持ってきてくれます。う、うれしい・・・この日は価格は気にせず、飲みたいだけ飲みたいように飲むと決めていました。
まずは生ビール小から始めます。
まずは今日の食材の紹介から始まりました。ランチでは、夜と同じ16,500円のほか、8,800円・11,000円の3コースがあり、私たちは11,000円のコースを選択しています。
天草の車海老は2尾ずつ。
琵琶湖の淡水魚もろこが泳いでいます。揚げるには仮死状態にしないといけないので引き取られていきます。個性的な大きな器。紹介元ブログでは金接ぎがしてあると書いてありましたが、うん、確かに。
スタートの2品は定番だそう。まずは茶碗蒸し。根室の雲丹とトリュフがトッピングされていて、中にはカマンベールチーズも潜んでいます。
ステキな器に盛られた生ハムのサラダ。ナッツのドレッシングが人気で、はじめの2品は外せないそう。玉ネギのチップも効いています。
ズワイガニとセリの和え物。和食の出身ということで、天婦羅だけではなくいろんな料理を少しずつ食べてほしいと、メニューを考えているそうです。それ、嬉しいなぁ。
先ほどお目見えした食材も、きれいに並べられて出番を待っています。美しい!
まずは生酒から始めたかったので尋ねてみると、分量が足りるかどうかわからないので出さなかったという兵庫県のお酒、播州一献(小売価格2,940円)を出してきてくれました。
この酒器はうちにあるものと同じに見えていたので楽しみにしていましたが、もう少しがっしりした造り。でも、持ちやすさは同じように手に収まるいい酒器でした。
ステキな器でお造りが用意されました。開ける前から楽しい器。
伊豆下田産金目鯛の炙りとマグロに、菊花と菊菜が添えられています。蓋の裏側がまた素晴らしい。美しい器を惜しげもなく使っていただける、幸せなお店です。
そろそろ天婦羅を始めましょうか、とお塩が運ばれてきました。左からからすみと沖縄の塩・白トリュフ塩・瀬戸内海の藻塩・新潟の花塩です。
「一応、おススメはお伝えしますが、途中からほとんどの人が聞いていないですね~」と笑っていらっしゃいました。「でも、好きなもので好きなように食べるのが一番ですよ」と、おおらかな店主。
天婦羅のはじまりは、天草産の車海老の頭から。この器に入れると、海老の頭が花のように見えてステキ。カリッと香ばしく揚がっていて、この先がますます楽しみ。
ここで、一度は飲んでみたかった兵庫県のお酒、十四代にトライしました。近ごろなかなか手に入らないとおっしゃっていたとおり、このお酒はかなり高かったんじゃないかと思います。あとで正規の小売価格を探して見ると恐らく5,000円ぐらい。でも、流通価格は3万円以上もしていました。いっときの獺祭みたい。そういうのはきっと蔵元も不本意ではないかと思います。
京都伏見の唐辛子。万願寺はちょっと辛いのに当たる確率が高いんだそうです。若いスタッフの作るちりめん山椒が敷いてあります。
鹿児島産の空豆。花塩がおススメ。ほっくりと仕上がっています。
小鉢がまたあいだに出されます。ホタルイカの酢味噌和え。敷かれているのはこちらでも分葱なのかな?
天草産車海老は、まずはレアで一尾。藻塩がおススメ。忠実に守る私(笑
鹿児島産筍、こごみを木の芽味噌で。
タケノコは、姫皮部分もかなりの部分が食べられますと教わったので、少しずつめくっていただきます。ほぼすべて食べられました。タケノコ大好き!嬉しい。
天草産車海老二尾目は、ウェルダンで。天つゆでいただきます。
タラの芽も天つゆで。好きなものが続々出てくるのが嬉しい~ 春は揚げるほうも楽しいのだとおっしゃっていました。
淡路島の玉ネギは、噛むほどに甘くておいしい。関西では玉ネギといえば淡路島ですが、こちらでは北海道産が主流。そういえばそうですね。
フキノトウは苦味が活きて美味しい。家の庭に自生しているのですが、天婦羅が苦手なので蕗味噌しか作ったことがありませんでした。でも後日、この薄さを思い出してチャレンジしてみると、おお!負けずとも劣らない(←単に初成功に浮かれる私)
ここからはお酒の瓶はもう出てきませんが、新潟のお酒、山城屋(小売価格720ml1,540円1.8ℓ3,080円)に突入します。
続々と続く天婦羅は福岡産アスパラガス。やっと国産が提供できる時期になったそう。
うるいとふぐ皮の酢の物。こうして、箸休めの小鉢が出てくるので、飽きることなく美味しく食べ続けられるのでしょう。
ことさらどこで修業したと主張したくないとおっしゃっていましたが、山の上のホテルで和食を担当していたという口コミの話はそのとおりとのことでしたので、あの感嘆したお店の出身だったんですね。
お、おっと!一つ食べてしまったところで撮り忘れに気づいた福岡産つぼみ菜です。近ごろ見かけることが増えて、気になっていた食材です。アブラナ科らしい味。花塩でいただきます。
白トリュフ塩は、アルベロベッロに行ったときに大量に買ったので、長く使っていました。クセが強いので、野菜の味をダメにすると店主は笑っていましたが、そのインパクトは夢中にさせられる味でもあります。
唯一このブラウンマッシュルームだけはトリュフ塩を勧められました。ジュワッとしたマッシュルームエキスに絡むトリュフ塩、うん、最高。
天婦羅が続くと、また小鉢です。鮪の脳天と春キャベツだそう。説明はむむ?と躊躇う名前ですが、マグロと春キャベツが意外にも合う。
日本酒は、宮城県伯楽星(小売価格2,998円)に続ききます。
天婦羅は江戸前太刀魚と鳴門金時。鳴門金時のホクホク感は天婦羅でこそのもの。
メヒカリの一夜干し。一夜干しにすることで旨味が増すよう。そうでなくとも美味しいメヒカリ、でも柔らかくて揚げるのが難しい魚だそうです。
とうとう、あの泳いでいた琵琶湖産もろこの登場です。藻塩がおススメ。この姿も美しいではないですか。
茄子の天婦羅に焼き白子を載せて。なんと贅沢な。少し焼いた白子がまた美味しい。
キス。これだけの数の天婦羅を食べても、ちっとも嫌にならないことには驚かされました。揚げ物はあんまり得意ではないのですが、サクサク食べ進められます。
これが最後の日本酒になりました。佐賀県のお酒、東一(小売価格720ml2,200円)です。スタッフさんに相談して、日ごろ飲まないお酒からチョイスしましたが、三重のお酒、作は飲み損ねたなぁ。
金目鯛を寝かして熟成させたもの。天つゆと大根おろし、藻塩でも。
五島列島アオリイカと秋田もろっこねぎとの酢味噌和え。もろっこねぎ、初めて聞きました。
岩もずくをさっぱりと。
最後の天婦羅は、対馬県産穴子。引き締まった筋肉質の穴子だそうです。山葵と合います。
最後にご飯です。少なめにしますか?尋ねられましたが、いや、いけそう。日ごろ小食気味かと思っていたのに、なぜかいくらでも食べられてしまうのです。
ホタルイカとのどぐろの天婦羅が入っていて、いくらもトッピングされたゴージャス版。
蛤と河豚のお吸い物をご飯にかけ、天茶にしていただくとさらに美味しいと教わります。ご飯そのままだと、これだけいただいたあとなので確かにちょっとキツイ。でも、天茶にするとスルスルと食べられます。
最後のデザートは、若いスタッフに任せてあるのだそう。奄美大島のタンカン、キーウィ、いちご、ブルーベリーのゼリーでした。
さて、何品いただいたんでしょう?天茶まで入れて30品+デザートかな?品数もさることながら、どこまでもくつろげる空間で、店主の話も絶妙の間合いで楽しく、満足度MAXで終了しました。
とりわけ狭い空間なので、入店してすぐに写真は大丈夫ですか?と尋ねたのですが、好きなだけお好きなように撮ってくださいとおっしゃてくださいました。おひとりさまも多いそうで、このあいだはYouTube中継をしている方もいらしたそうです。楽しそうでしたね~と笑顔の店主。食材や日本酒なども好みがあればお知らせくださいとおっしゃっていました。
皆が幸せでありますようにと願っての姿勢は、とても心を打つものがありました。そんな店主の心づくしの食事の数々、本当に美味しく楽しくいただきました。ごちそうさまでした。ぜひ皆さまも一度お出かけくださいませ。
ちなみにお手洗いはたぶん、にしむらと共有だと思います。
お支払いは34,100円。内訳なんぞ何にも気にならない満足度がありました。
ランチコース11,000円×2+(生ビール小×2・播州一献・十四代・山城屋・伯楽星・東一)
なお、日本酒の小売価格の併記は甚だ野暮ですが、ちっとも覚えられない銘柄の助けとして調べています。