2022年(令和4年)3月
今年初めての旅行は、去年の12月に予約していた高松行き。まずは、数10年ぶりに小豆島を訪れましたが、本命はアートを巡る旅の続きです。去年10月、ベネッセコーポレーションが瀬戸内の島に展開するアートを巡るツアーに参加したのですが、船舶のトラブルで2日目が中止になってしまいました。
その続きが見たいとやってきて、ひとつめの島、豊島を巡ったあと、岡山を住所地とする犬島へ渡り、見学を開始しています。前回はたった10年稼働しただけで操業停止に追い込まれた犬島精錬所跡と美術館を回りました。
続いては、犬島にある家プロジェクトを見学します。家プロジェクトとは、使われなくなった家をリノベーションしてアート作品を組み込んだもので、島全体を美術館と考え、暮らしに生命力を与えるものとしてのアートを展開しています。
巨大な岩の上に祠が見えます。犬島は御影石で有名な島ですから、採石業者の守り神としての信仰があったのでしょう。山神社といいます。
ん?見えない?これではどう?表に回るときちんと鳥居もお社もあるみたい。
その山神社のすぐ近くに最初の作品、F邸があります。
建築家妹島和世がリノベーションしたF邸に、名和晃平のアート「Biota (Fauna/Flora)」。でも、正直なところ家プロジェクトはさっぱりわからないんですよね^^;
坪庭も併せて作り変えられていますが、その片側には子どもが立っています。暮らしに融合させるアートというコンセプトのとおり、人の像にはモデルの子がいて、その子の成長に合わせて像も成長させたそう。
反対側の庭には・・・なんだろ?芸術家の考えることはさっぱりわかりません。それらしい解説がベネッセのHPに合ったので、ご興味があればそちらを。
木塀で囲まれている場所が、あとほうの坪庭の場所です。
こちらは石職人の家跡。淺井裕介のアートで 「太古の声を聴くように、昨日の声を聴く」という名がついています。
生き物が描かれ、確かにここに誰かがいたという生命力を表しているようです。
足跡や、植物の化石のようなモチーフも。
この傍に建つ家は住民がいて、作業をずっと見守っていたそうです。住人は私が見かけた限りは手押し車を押しているおばあちゃんたち。そのおばあちゃんもここに描かれていますが、ご本人はこんなんじゃないよ、とおっしゃったそう。だってちょっとかわいくないんだもの(笑
集落を歩いて行くと、次の作品群が同時に見られる場所を通ります。手前の透明なアートのS邸と奥のカラフルな色合いが見えるA邸。
作品は一定時期が来ると入れ替わるそうですが、この作品は島民にも評判が良くて、このままにしておいてほしいという要望が出ているという話でした。
このS邸は荒神明香 「コンタクトレンズ」という作品。レンズを通して見ることで、違った世界が見えるということを表しているようですね。大きさも焦点も違ったレンズから多様性を感じてほしいそうです。リンクさせた記事の中に、前の作品の写真も載っていましたが、これもまた島を明るくさせるものでした。
広場側から見ると、ほかの家が映し出されてまた違う景色になります。それより、ここはS邸と言われているのだから、どなたかの家の跡地に造られているのでしょう。
斜め向かいにあるA邸も同じなんでしょうね。ベアトリス・ミリャーゼス 「Yellow Flower Dream」という作品。犬島で見た花や波、葉などを抽象化して描き込んでいるそうです。
色によって犬島のエネルギーを表現できるし、17枚の絵を構成しました。
この作品の面白いところは、真ん中に置かれた椅子に座って外を眺めると、透明に外が見えるところだというので、座ってみました。ほんとだ!犬島の自然の中にある風景とともに、集落もまた存在することを気づかせてくれる作品なのです。
A邸を抜けて坂を上っていくと、雰囲気のいい建物の傍を通ります。不定期に営業する犬島ホッピーバーで、クラフトビール会社であるホッピービバレッジ株式会社の社長、石渡美奈がこの地を気に入って、島民の憩いの場所になるようにと古民家のリノベーションを考えたそうです。
印象的なのが犬島の御影石で、雨水が屋根を伝ってここへ流れるだけでなく、屋根を支える梁の一端も支える構造になっています。
このあたりで振り返ると、犬島精錬所の煙突、S邸の「コンタクトレンズ」が見えるいいスポットでした。
中の谷東屋。ウサギの椅子に座ると声が大きく反響する仕掛けになっています。
このC邸、半田真規 「無題(C邸の花)」だけが撮影不可でした。ビビッドカラーで色づけられた木彫りの切り花が置かれた大胆な作品。ここは集会所だったそうです。
最後はⅠ邸。ベルリン在住のアーティスト、オラファー・エリアソン「Self-loop」。中は題が表すとおりの作品です。ちょっと見てみましょう。
ふたつの部屋に鏡が3ヶ所置かれていて、丸い輪のスタンドのところに立って鏡を覗き見ると、自分の姿がすべてに映されます。どこを見ても自分がいて、その自分を見てる自分が別の鏡にいる、その無限ループを感じる作品で、こういう視点はベネッセアートでよく感じさせられました。
庭は犬島の植物が植えられていますが、これらの拡大版ともいえるくらしの植物園が、島西部につくられています。
最後に、ぐるりと回って犬島の見学も終わり。ここで石職人の家跡と同じアートに再び出会いました。
敷地を飛び出し、路地にまで発展したアート。島にあふれる生命力は、こうして更なる展開を果たしています。
なんともキュートな生き物たち。犬島アートは、明るく朗らかなものが多かったという印象があります。
海岸には大きな御影石がごろごろとしていました。残念石といわれるそうで、採石したもののいまひとつだった石が捨てられているんだって。
犬島精錬所から見たと同じような池がこちらにもあります。小さな島のあちこちを掘り起こして採石してたんですね。大阪城以外にも、江戸城や岡山城にも運ばれていたそうですよ。
さぁ、これで犬島見学もおしまい。ぐるりと回ったその先には、中の谷東屋にあったと同じウサギの椅子が置いてありました。
ツアーは直島へ戻って解散ですが、帰りの飛行機が岡山発しか取れなかったので、私たちは豊島でツアーを離脱して岡山の宇野港へ向かいます。乗継時間は13分。宇野港到着後も電車出発まで16分というタイトなスケジュール。無事、成功するんでしょうか。