2023年(令和5年)8月7日(月)
去年娘が旅行したアイスランドを訪ねる夏の旅。前回はその前に訪れたアイルランドの首都ダブリンのアイリッシュウィスキー博物館のツアーに参加した話を中心に書きました。
さて。苦労してチケットを購入したトリニティカレッジ図書館の予約時間が近づいてきました。入場料は18.5EUR(2,960円)とかなり高額です。構内へは自由に入れると書いてありましたが、こんな小さな木製の扉を見るとちょっと怖気づきますよね。
トリニティカレッジは1592年、エリザベス1世によって創設されたアイルランド最古の大学で、イギリスのオックスフォード大学やケンブリッジ大学と並んで英語圏最古の7大学のうちのひとつと言われる超名門校です。扉をくぐって振り返ってみると、自由に出入りできるものの、出入口はごく限られた箇所にしかないことに気づきます。
石造りの建物に囲まれたパーラメント広場。ツアーでも必ず訪れる名所なので、朝から何組もの団体客がやって来ていました。思いの外、コンパクトな大学です。
広場の右手にあるのがトリニティカレッジ図書館。見た目はシンプルで、ここを目当てに世界中からやってくるような観光地には思えません。
さらに奥の建物との間にイタリア人彫刻家、Arnaldo Pomodoro(アルナルド・ポモドーロ)作のブロンズ製彫刻、sphere within sphere(球体を持った球体)があります。バチカン美術館のために最初に造られたあと、さまざまなバリエーションを展開し、ニューヨークの国際連合本部ビルのほか、世界に13個あります。
周囲の建物が映し出されているように思うかもしれませんが、違う角度から見てみましょう。レオナルド・ダ・ヴィンチの人体図のように「円、直線、正方形の幾何学的象徴」をテーマにした目の形をしたこの寓意彫刻で、壊れた、ひびが入った、引き裂かれた、破壊された、分解された天球の地球儀となっており、日本では箱根彫刻の森美術館に展示されています。
芝生のグランド、カレッジパークの向こうには、Pavilion Barの建物が見えます。その名のとおりお酒も飲めるレストランで、一般人の利用も可能です。大学内には計6ヶ所のカフェテリアがあるのですが、祝日で閉まっていたのが残念。
さて。予約時間が近づいてきました。これまで海外で行った図書館の中でもっとも感動的だったのは、スイスのザンクト・ガレン修道院図書館でした。撮影不可だったので画像はHPなどから拾うしかありませんが、あの静謐とした佇まいは忘れがたいものがあります。
さて。図書館は2階にありますが、1階の見どころは8世紀に製作されたキリスト教新約聖書の装飾写本「Book of Kells ケルズの書」です。
1200年も前の福音書が色鮮やかに美しく保存されているということで国宝に指定されているのですが、わりあい自由に見学でき、撮影不可なのは一ヶ所だけでした。
ケルズの書についての説明を1枚ずつ見ても読めないので、2階へ上がります。
今は見学するだけとなっている旧図書館ですが、天井高くまで蔵書が収納されています。・・・ん?
そうなんです。本が、ない。確かにHPにもそう書かれていた記憶があるし、チケット購入時にも言われました。でも、こんなにも本当にないんだ・・・
ロングルームと呼ばれる図書館内部はがらんどう。アーチは美しいけれど、やっぱり本があるとないとでは大違いですよね。18.5EUR(2,960円)の入場料に値引きはないんかい。
アイルランドで現存する最古のハープBrian Boru Harpが飾られています。アイルランドの国章にはハープが描かれており、そのモデルとなったハープです。
柳とオークで作られた美しいボディ、29本の真鍮の弦が張られ、精巧なデザインと埋め込まれたクリスタルなどから、貴族に向けて演奏していただろう優れた音楽家のものであったことがわかるという説明が書かれています。
部屋の真ん中のガラス張りのケースの中に見えるこれもケルトの書ですが、撮影禁止にはなっていませんでした。これが福音書だとしたら、なにを描いているのだろう。
さて。本がなぜなかったのかというと、メンテナンスに入っているのだそうです。400年以上手入れし続け保存してきたけれども、汚染と埃の蓄積でダメージを受けているので、新しい技術を持って保護しようという取り組みのもと、蔵書20万部を移動させています。
移動に当たっては、1冊ずつ洗浄し、寸法を測り、電子タグをつけて目録とリンクさせた後、空調管理された保管施設に入れられました。
貴重な古書を後世に残すための作業ではありますが、趣きを与える蔵書がほぼゼロとは、いささか残念でもありました。
ところでこの図書館は、映画「スター・ウォーズ エピソード2/クローンの攻撃」に登場する銀河系の情報の宝庫「ジェダイ・アーカイブ」のモデルではないかと言われています。私は映画を見ていないのでわかりませんが、そのほか司馬遼太郎著の「街道をゆく30 愛蘭土紀行Ⅰ」の表紙としても知られています。ご存じの方、記憶を呼び覚ますことはできるでしょうか。
たった15分ほどの滞在で、トリニティカレッジ図書館からは退散。これまで行った図書館には、プラハのストラスホフ修道院図書館、豪アデレードの南オーストラリア図書館などがありますが、図書館の雰囲気はどこも好きです。でも、観光目的に入るのは躊躇する場合もあるので、また気をつけてリサーチしていきたいと思います。
奥行き約65m×幅12m×高さ14mのロングルームを抜けて1階に降りると、売店に直結しています。
1EUR≒160円の今回の旅行では、購買意欲はまったく削がれていたので素通り。ダブリンでの観光施設は、ギネスストアハウス、アイリッシュウィスキー博物館、トリニティカレッジ図書館と3つ見学しましたが、計11,280円。個人的にはツアー参加に代えてオールドジェイムソン蒸留所のショップ見学も考えていましたが、いずれにせよ物価が高いのがネックでした。
さて、やっとランチの時間です。今回のテーマはシーフードにテーマを置いていたのですが、なかなか見つけられませんでした。午前中に通った老舗ケーキ店Bewley's Grafton Streetでも食べられたのですが、シーフードばかり考えていたので候補に上がらなかったし、ランチタイムはどこもバーガー系やフィッシュ&チップスばかりで食指が動かず、とうとう諦めて入ったのがイタリアンレストラン(笑
前夜のラム肉の印象が悪かったので、イタリアンなら失敗はないだろうという消極的理由でチョイスしたお店「Farrier & Draper」。
入口の雰囲気も悪くなかったので思い切って入ってみたのですが・・・
この様子は紛れもなくバーですよね。しかも14時を回っていたためもあるのか、私たち以外に1組しかいないという人気のなさ。
注文したのは、イタリアのプーリア州を旅したときに出会ったパスタ、オレキエッテ13EUR(2,080円)。ケール、ガーリック、チリソースのトッピング。
ピザはGRANDE。トマトとモッツァレラをベースにイタリアンソーセージとスパイシーソースのパンチの効いた1品15EUR(2,400円)。どちらも悪くありませんでしたが、なにしろ炭水化物満載で食べきれなかったので、持って帰りました。でも、時間を置いた冷たいパスタやピザなんて美味しくないだろうと思っていたら、しっかりした味付けだったので悪くありませんでした。
翌日の夜、お店の前を通りかかったら大繁盛店だったので一安心。でも、ダブリンでの食事はなかなかうまくいきませんでした。ランチに重きを置きたい私たちにとっては、バーガーやフィッシュ&チップス主体のお店では難があるし、調べていったお店は毎度のことですが閉店していたりだったので、次回以降、また頑張ることにしましょう。