2022年(令和4年)3月
このお店を見つけたのは、ほんの偶然でした。昨年12月、食べログで高知でランチの場所を探していたとき、私の行った「座屋」に対して超辛口レビューを書いていた人が、東京の外れ、町田の「薪焼ステーキ コケット」を絶賛していたのです。その行動範囲の広さにも驚いたけれど、あの町田にそんな店が・・・?
町田はラーメン屋が多いことで知られていると聞いたことがあるけれど、ステーキ?うーん。気になる。どうやら、近ごろ武相地区(多摩南&相模原)を中心に、KEEP WILL GROUPという会社がいくつかの店舗を展開しているらしい。チェックしてみると、どれも評価は悪くないんだけど・・・なんせ町田。おしゃれ感や大人の落ち着いたお店を探すには難しいここで、大丈夫なんだろうか。
食べログの評価は一見いまひとつだけれど、口コミを読んでみるとどれも大絶賛の高評価。またしても、なぜか評価に反映しない珍事なだけみたい。これは、行って確かめてみてもいいかも。ちょうど仕事の都合で、17時半からの予約に間に合いそうな日があったので予約してみました。
JR町田駅から出て東急ツインビルのあいだに伸びる原町田大通り。小田急線からでも3分ほどで来られるでしょう。
目印は、マツキヨの入っているビルの後ろ。3年前に建て替えられたAETA町田の中に入っています。
そうか。建て替え終えてすぐコロナ禍に陥ってしまったから、もう3年になるのね。当初は会員制のバーとしてオープンしたということなので、まさに隠れ家で良かったのでしょう。まさかの看板なしです。
ほかに目印があるとしたら、系列店のカジュアルレストランSTRI(ストリ)が同じ階に入っているので、それを目指していくといいと思います。
ただ、ビルの中の看板には、系列3店舗STRI、Steak Coquette、BAR ROJYがちゃんと8階に出ていました。
エレベーターを降りるとすぐにこの状態。ここから見えるのがカジュアルレストランSTRIのスペースで、ランチタイムはビュッフェのみ、夜はアンガスビーフや薪窯ピザが楽しめるお店です。ビュッフェに興味はないけど、夜のメニューはちょっと興味あり。気軽に寄るには便利そう。今は寒いから閉めているけれど、テラス席もあるんです。
私たちは隣のSteak Coquetteにお邪魔します。ドアハンドル近くにそっと店名が書かれているだけの秘密の扉。
店の入口を中から見るとこんな感じで、外からも同じ。閉めてしまうとそこにお店があるとはわからないような隠れ家感満載の入口です。
カウンターにはグラスがふたつ置かれていて、「今日は貸し切りです」とおっしゃいました。なんですと?一休.comでは17時半と18時半の予約枠がありましたが、蔓延防止措置中だったのでそれぞれ1組のみ受け付けていたのかもしれません。
中はおしゃれで落ち着いた空間。確かに、町田じゃない(笑
ウェルカムドリンクはこのバーでいただきます。四国のブラッドオレンジをイタリアのスパークリングワインで割ったもの。ノンアルコールでも作ってもらえます。
ここはBAR ROJYとして営業しているので、食事のあと移動して利用することもできます。左側に見えるその先からがコケットのスペース。
コケット側から見ると左にバー、右のアーチから向こうがSTRI。賑わいが聞こえてくるので、貸切でも逆に緊張することなく過ごせます。
私たちの席は奥まったソファー席。外からの目線を隠してくれる空間です。お忍び向けか(笑
そのソファー席からSTRI側を見ると緩く仕切られていて、落ち着きと賑わいを上手に両立させている感じ。
今日のコースは、熟成 黒毛和牛 肩サンカク肉とスペシャリテのステーキコース 8,580円(税サ込)。地元の食材を使おうというコンセプトはとてもいい。神奈川県町田市とも揶揄される東京都町田市をどう盛り立てていってくれるんでしょう。期待大です。
今回は、ワインのペアリング3,388円(税サ込)もお願いしています。ボトルワインがあるならそれを希望したかったんだけど、公式HPからも口コミからも情報が得られなかったんだよな。
で、その1杯目がこちらのニュージーランド産の白ワイン。赤ワインラバーの私たちなのに、今日のメニューからは肉料理でしか飲めないことがこれでわかってしまった。うむ、問い合わせるべきだった。
前菜は8点。グラスに入ったスープから時計回りに、
● 秦野産菊芋のスープ ● 馬肉のタルタル ● 町田しいたけのマカロン ● マグロの燻製シュークリーム
● 相模原産やまゆりポークのパテ・アンクルート ● 海老のカダイフ包み
● 岩海苔のパートブリック ● ブロッコリーのソフトクリーム
かつて横浜から八王子をつなぐ絹の道の中継地点だった町田では、行き倒れた馬を馬肉料理として提供したことから、今なお人気店の柿島屋など古くから馬肉料理が有名です。この馬肉のタルタルも地元岡直三郎商店の日本一醤油を泡立ててのせたもので、とても美味しい。
パテもいい出来だったけれど、とりわけ気に入ったのが海老のカダイフ包み。カリッカリの細いカダイフの香ばしさと海老の取り合わせが抜群。
ちょっと全体に塩味が強いのが気になる味付けではあったけれど、マカロンが甘めだったり味のバランスは良かったと思います。シェフは箱根のオーベルジュ、AU MIRADOR(オー・ミラドー)で修業を積まれた方だそうで、HPを見ると確かにこのテイストはそこから引き継がれたものだということが、独特の盛り付けからもわかります。
左の岩海苔は前菜のバランスにアクセントをつけていたし、ソフトクリーム仕立てのブロッコリーも楽しい。手の込んだ前菜をステーキハウスで食べられるというのは嬉しいですね。
次に物々しくヒュミドールに収められて出てきたのが至極のフォアグラムース シガー仕立て。葉巻を収納する箱を「ヒュミドール」と言うことを、今回初めて知りました。葉巻を長く持たせるのには調湿が最重要課題らしい。
湿度計が備えられた本物のヒュミドールに、まさに葉巻が収められています。すごい演出!
箱の下段にはシガートレーも収められていて、サーブの準備が進められています。
葉巻に見立てたフォアグラムースに合わせるのは、どちらもブルーベリーから作られたソース。パウダーは灰を、クリームは火種をイメージしています。残念だったのは、ムースが室温ぐらいに柔らかくなっているほうがたぶん美味しいだろうなというところ。棒状に固まった状態ではロール状にしたアーモンドクッキーとの一体感がなかったのだけど、たぶん本当はもう少し戻してから提供されるんじゃないかな。(もしこれが不要であれば、シガーなしのコースもあります)
葉巻をくるんだ紙に描かれているのは、このお店の名前の由来、コケット。Coquetteとは魅惑的な女性を指すようで、あんまりいい意味では使われないみたい(笑
帯部分には武相地区の7都市(町田・相模原・海老名・厚木・大和・座間・秦野)の文字が書かれています。
シガーとのペアリングは、ハチミツのお酒。なんと造っているのは高知県の菊水酒造。蜂蜜醸造酒ミードは、世界最古のお酒として古来から世界各地で愛飲されているそうです。
あっま。でも、濃厚な甘さはフォアグラムースがもっと柔らかければ、うまく絡んでよりおいしかっただろうという雰囲気はわかりました。ただ7%じゃ物足りないかな(笑
続く三浦鮮魚のポアレは鯛でした。三浦から届けられた鯛は、皮部分がカリッと焼かれ、いい出来。
下に敷かれた里芋のヴァンブランソースはねっとりとしていて好み。クレソンの苦味もまたいい。
ここから先に提供される食器は、地元町田のサカエ陶器店のものだそう。椎茸に、醤油に、馬肉に陶器、いろいろあるのね、町田。知らなんだ。
ワインはもちろん白。スペイン北西部のアルバリーニョというぶどうを使うワインで、スペイン北部を代表する高貴な品種だそう。海の近くで栽培されることが多く、魚介類とも合うことから、海のワインと呼ばれています。
フォカッチャが出されました。モチモチで美味しい。隣のSTRIのピザはナポリ風だそうだけど、これなら期待できるかも。
さて。どどーんと登場しました本日の主役。熟成黒毛和牛黒三角肉のローストです。焼き上げるのに薪窯で3時間かけるそうで、それゆえ当日の予約ができないことになっています。まずはくべ始めた薪の高温で表面を焼き、そこからじっくり火を通していくのだとか。
まずは、添えられた野菜から切り分けていかれます。パン生地に野菜を包んで焼き上げることで、そのものの旨味だけを凝縮させるという手法。
外のパン生地の役目はそれだけでおしまい。贅沢な使用の方法ですが、うまくロス部分を使えば無駄でもないでしょう(←根っからの貧乏性)。中は地元の小清水さんが作った野菜で、里芋、長ネギ、芽キャベツ、人参など。
次はメインの三角肉。1人200gもあります。80gぐらいが私の食べられる量なのだけどと心配していましたが、口コミによると残りはサンドウィッチにしてくれるそう。そうでなければ、ここへは来られなかったよ。
なにより見事なのがこの切り口。切り分けても肉汁が出ないのは、旨みがきちんと肉の中に残っているから。そして、これがきちんとしたレアなのだなということも良くわかります。3時間かけて中まで火は通っているけれどレア。素晴らしいじゃないですか。
大阪在住のころは、少なくとも半年に一度は鉄板焼きのお店へステーキを食べに行っていました。でも、こちらへ来てからは手軽に楽しめるお店がなく、その間、味覚も変わり、牛肉についてどう評価すればいいのかわかりません。ただ言えることは、確かに旨味が凝縮されていること、めちゃくちゃ柔らかくてとろけるような出来であることで、もしかするとかなり素晴らしい出来のお肉を食べているんじゃないかと思うのに、牛肉への情熱が足らずそこまで語れないのが残念。
添えられたマデラソースはもちろんステーキに最適。粒マスタードもよく合います。ただ、やはりここのお料理は少し塩味が強いので、野菜はなにもつけずに食べるべし。
最後のワインは赤ワイン。オーストラリアワインで、醸造家のピーター・レーマンの肖像をラベルにした「ポートレート」と呼ばれているシリーズです。しっかりとした濃厚なテイストはステーキにぴったり。でも、この肉量にこれだけ(涙
私たちは揃って、小さく4切れぐらいしか食べられませんでした。もちろん、サンドウィッチにしてもらえるから無理して食べないのであって、そうでなければもう少しはいけたと思います。でも、このワインの量じゃ無理。かといって、今さら頼むのもなぁ・・・
というわけで、デザートに進みました。苺のチュロスには、ピスタチオのアイスなどが添えられていました。
コーヒーにもこだわりがあり、グループ会社のひとつで自家焙煎しているもの。濃いめのコーヒーでしたが、デザートとの相性が良かったのでブラックでいただきました。
肉好きであればもっと熱く語れるだろうことが、ただ残念。でも、じわっと驚いたことには、お土産にしてもらったサンドウィッチ。残し過ぎたのでひとり4切れもあり、朝食でまず2切れ食べたあと、ポタージュスープとサラダとともにお弁当に持って行きました。
これがね、嚙み切るっていう感覚がないんです。パンとしっかり一体化していて、パンのソフトさに負けることなく食べられちゃうの。朝はレタスを挟んでみたんだけど、挟んだはいいけど別々に食べるハメになるってあるでしょう?そうじゃなくて一緒に食べられちゃう。ただ、ステーキのボリュームを考慮して2回に分けて食べましたが、それじゃ足りなかったけどね。
次回はステーキサンドを持ち帰るために行こうかと思うぐらい美味しかったです。こんな贅沢、ふつうじゃできないもんね。
お支払いは一休のポイント利用もあって21,000円だったけど、本来なら23,936円かな。
(熟成 黒毛和牛 肩サンカク肉とスペシャリテのステーキコース8,580円+ペアリングワインセット3,388円)×2