英語も話せないし飛行機も苦手、それでも個人手配で海外旅行

交通費嫌い。飛行機は苦手だけどヨーロッパ大好き。空港ラウンジ目的でSFC修行済み。休暇の取れない勤め人。

【イタリア】2日目-4 興味がなくとも圧倒されるパドヴァ・スクロヴェーニ礼拝堂のフレスコ画

 

パドヴァへ戻ってきました。そのままスクロヴェーニ礼拝堂の入場券の引き換えに向かいます。隣接のジョット公園ではクリスマスの催しをしているようでしたが、礼拝堂は見えるもののここからは入れません。

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通りに沿ってそのまままっすぐ行くと、入口が見えてきました。f:id:fuwari-x:20200116165931j:plain

 

ところで、1305年完成のスクロヴェーニ礼拝堂は、Giotto di Bondone(ジョット・ディ・ボンドーネ)によって描かれた、西洋美術史上もっとも重要な作品である一連のフレスコ画で有名です。

イタリアではビザンチン美術が根強く残り、なかなかゴシック美術への転換が浸透しなかったのですが、ジョットによってそれらが打ち壊され、現在見られるような現実味あふれる素晴らしい絵画をもたらし、ルネッサンス美術の礎を作ったと言われています。

そういったことから、ジョットは「西洋絵画の父」とも呼ばれていますが、私が知っているのはフィレンツェにあるジョットの鐘楼のみが(汗

ビザンチン美術とは何ぞや?という点については、奇しくも翌日たっぷり見ているのでそのときに。

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門を入って左手に見えるのがスクロヴェーニ礼拝堂で、高利貸で財産を築いた一族出身のエンリコ・デッリ・スクロヴェーニがパトロンとなって創設されています。

当時、過剰に利子を取る高利貸はキリスト教秘跡を受けられなくなるほどの重大な罪とされ、初期の銀行業者は自分の商売のゆえの魂の地獄堕ちについて気にかけていました。エンリコが私財を投じて礼拝堂を建設したのは、そんな父親の罪と、自身の免罪とを意図したものだったと指摘されています。

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先に書いたように、スクロヴェーニ礼拝堂を見学するには4つの方法があります。

1.併設する博物館との共通券を購入しての見学 14EUR

2.パドヴァカードを購入しての予約(礼拝堂予約別途1EUR要) 16EUR~

3.博物館閉館日の月曜日はスクロヴェーニ礼拝堂のみ見学可 10EUR

4.19時以降の夜間拝観(期間限定) EUR 

 

パドヴァを観光するかどうかで違ってくるので、なかなか予定が決められませんでした。調べた限りではそこそこ見どころもあるようでしたが、ベローナやボローニャ、ほかにも生ハムで有名なパルマなども日帰り可能だったので、パドヴァは後回しでいいだろうとやっと結論付け、夜間拝観を選びました。 

fuwari-x.hatenablog.com

 

既に出発3日前。ちょっと前までどの時間帯でも空いていた夜間拝観の予約時間19~22時の中で、滞在2日目の20時が一番早い時間になってしまっていました。普段、夜は出歩かない私たちですが、これを逃すことはできません。

 

チケットを引き換えると、予約時刻の5分前に礼拝堂の前に集合するように言われました。

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ボローニャから早めに戻ったので1時間半ほど時間があり、パドヴァの中心地へも行ってみたかったのですが、さすがに朝から歩き詰めだったので諦めました。外は言うほど寒くありません。

 

10ほど前に集合場所へ行くと、ブレブレですが礼拝堂の前にこんな部屋があります。フレスコ画を傷めないため、15分ほどビデオを見ながら礼拝堂と同じ温度になるよう順化させるのためだそうです。

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見終わったころ、前の見学者をまず全員退出させたあとに入場します。一番初めに入ったので、誰もいない礼拝堂を素早く撮ってみました。青が美しいフレスコ画が壁面から天井に至るまで描かれています。

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まず正面に見えるのが、最後の審判

礼拝堂は受胎告知と聖母マリアの慈愛に捧げられており、ジョットのフレスコ画聖母マリアの生涯を描き、人類救済におけるマリアが果たす役割を祝福するものになっています。

えぇ~っと思ったのが、

 

十字架の左下に紫色の服を着て跪いている人物が見えますが、
この人物こそがスクロヴェーニ本人なのです。

 

ええ~?自分を描き込んでもらう?しかも、「自分の」礼拝堂をマリアさまと侍女に捧げているところを描いてもらってるんですよ。あーた、最後の審判のその場面に自分を登場させる?どんだけ自己顕示欲があるのか、はたまたどんだけあくどい高利貸をして、どんだけ贖罪の必要性を感じてたのか?この礼拝堂を奉献したのはボクなんだから、忘れず天国行きをよろしく!ってそのほうが罪深くない?

ええ。スクロヴェーニは右側の地獄へ落される人たちののほうではなく、しっかりと左側の天国に召される人たちのほうに描かれていますよね。

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最後の審判と向き合っている祭壇のまわりに描かれているのは、右上段の枠組みの中に見えるのが受胎告知を受けるマリア、左上段が大天使ガブリエル、その下にあるのがユダの裏切り。黄色い服のユダの後ろで、悪魔が背中を押してるんです(笑

そして、上のアーチには受胎告知の天使を遣わす神が描かれています。

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天井のこの色は、ホテルの椅子やシーツのカバーと似ていませんか?私はここをイメージしているのだと思いました。

左の円に聖母子像、右がキリスト像、そして洗礼者ヨハネの像と3人の預言者や聖人がまわりを囲っています。

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見る順序は、入口左上からからマリアさまの生涯、そしてキリストの生涯という順にぐるりと描かれています。

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上段には、供物を授けるヨハキム(マリアさまの父)。羊を捧げ、神が受け取るところが描かれています。その羊は、火の上で焼かれて骨ばかり。隣はヨハキムの夢。犠牲を捧げた後でまどろむヨアキムの夢に天使が現れお告げが出ているところです。

中段に見えるのは、エジプトへの逃避行ヘロデ王が幼い救世主を殺害しようとしているというお告げを聞いてエジプトへ避難するところです。 

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中段はキリスト誕生、その右隣にはキリスト誕生の祝福に駆け付ける東方三博士の礼拝があります。これは翌日行った場所でも同じ場面を見ているので覚えていてください。

下段には最後の晩餐が見えます。

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最後の晩餐に描かれているユダは、左端の薄い黄色い服を着ている人とされています。

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反対側です。下段には磔られたキリストが奥に、弟子たちの前で昇天するさまも手前に見えます。右端は精霊降臨で、キリスト伝ラストの絵です。

中段の右端は、キリストが高利貸を神殿から追い出すところなのですが、いやはや、スクロヴェーニにはデリケートなシーンですね。

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キリストの磔刑。青い服の聖母マリアは気を失い倒れかけています。足に縋り付いてい嘆き悲しんでいるのがマグダラのマリア。一方、右側では兵士が浅ましく衣服を取り合っています。

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その隣の絵は哀悼です。中央にいるヨハネは両手を広げ哀しみを表現ています。上空の天使たちも嘆き悲しんでいます。

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下段には7つの美徳、悪徳の擬人像が描かれているそうです。

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クリスチャンであればどの場面もわかるからでしょう、あれこれ指をさしながら鑑賞していました。

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全体の人数は40人ぐらいでしょうか。夜間拝観の見学時間は20分。夏場は昼間の見学が15分なので長めです。どの場面もひとつずつ確認したい人には到底時間が足りないようですが、私にはゆっくり見れたと思います。

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ちなみにこのスクロヴェーニ礼拝堂は、徳島県鳴門市にある大塚国際美術館で見ることができます。ここはポンペイの秘儀の間などを原寸大で陶板によって再現しており、私もいつか行ってみたいと思っています。

 

細部まで表情豊かに描かれているそれぞれの絵を、ざっとした聖書の流れとともにきちんと予習してから訪れたら、さらに素晴らしさを享受できることでしょう。

ちなみに夜間拝観は期間限定で、今、検索すると出てきませんでした。最新情報をスクロヴェーニ礼拝堂(公式HP)から入手してくださいね。

最後に。推薦してくださったamalfiさんに、謹んでお礼申し上げます。