英語も話せないし飛行機も苦手、それでも個人手配で海外旅行

交通費嫌い。飛行機は苦手だけどヨーロッパ大好き。空港ラウンジ目的でSFC修行済み。休暇の取れない勤め人。

【大分】中津市は鱧料理が有名 「日本料理 筑紫亭」でお昼のコース

2021年(令和3年)7月

 

ワクチン接種をまずは1回終えたので、1年半ぶりに飛行機に乗りました。

あれこれ行先を考えたものの、宿泊は避けようということになり、その分、珍しく特急列車に乗ったり、タクシーをチャーターしたりしています。 

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羅漢寺へ行くことを決めたあと、重要だったのがランチ。中津は何が有名なのだろうと調べてみると、鱧(はも)料理が有名ということを見つけました。

関西人にとっては馴染みの鱧。中でも京都が有名と思っていたので、とても意外に思いました。でも、相棒も私も鱧は大好き。ちょうど半月前にも取り寄せたぐらいです。

 

①プレミアムクラスへアップグレードできて、②ランチも予約できる日、しかも、③羅漢寺へ行くためには雨天ではないこと。これらすべてが整って直前に予約できたのも、コロナ禍だからこそでしょう。悪いことばかりではありません。

 

ふたつのお店で悩みましたが、明治34年創業「日本料理 筑紫亭」に予約を入れました。『ミシュランガイド熊本・大分 2018特別版』にて一つ星を獲得した老舗料亭です。

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羅漢寺へ行くために聞いたラストオーダーは13時半。中津着が11:41だったので先にランチにしたかったのですが、12時半以降でなければ料理人が不在とのこと。なんでも、この筑紫亭はJR九州の新観光列車 36ぷらす3 という、九州一周の豪華列車にお弁当を届けているのだそうです。

 

このJR九州 新観光列車 36ぷらす3は、2020年10月16日運行開始の特別急行列車で、九州7県を5つのルートに分けて走っています。各ルートでは沿線の豪華弁当が予約でき、筑紫亭が担当する日曜日は、大分駅10:48発/別府駅11:08発 → 小倉駅着15:01着/博多駅16:32着というルート。個室ランチを請け負っており、料金は19,500円/人とありました。

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中津市を通るルートでは、停車駅の杵築駅中津駅でホームで特産品の販売があるほか、門司港駅では復元された駅舎の見学ができるなど、各ルートによって楽しみ方がいろいろ用意されているので、少しずつ制覇していくということもできるようです。

 

さて。羅漢寺の下り道では手間取りましたが、13時半のランチ予約時刻に無事間に合いました。

1914年(大正3年)に建てられた筑紫亭の主屋(しゅおく)と離れと塀は、2003年(平成15年)に、国の有形文化財に登録されています。外では若女将が出迎えのために待ってくださっていました。

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中に入ると、落ち着いた佇まい。

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玄関脇には、1930年(昭和5年)11月、筑紫亭で開かれた句会で放浪の俳人種田山頭火が詠んだ「是が河豚かとたべてゐる」と書かれた句碑があります。初めて食べた河豚のことをご機嫌で詠んだ句だそう。

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玄関から見る廊下も階段も磨き抜かれ、100年を超える時を大切に使い続けてきたことがわかります。

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奥に見える「花」は有名な方の書だそう(名前は失念)。価値のあるものも日常に惜しみなく使うのが、ここ筑紫亭です。

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中庭のまわりをぐるりと回って、お部屋へ案内していただきました。苔むした中庭を眺めながら通るとき、思わずほぅ・・・と嘆息が漏れます。

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通された部屋はこちら。今は和室でもテーブル遣いのところが増えましたね。

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床の間の前にある黒電話が懐かしい。現役です。

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ガラス越しに見える中庭もまた素敵です。他の部屋の気配はまったく感じません。

中津では冬には雪が積もるそうですが、雨戸がなくても耐えうるとおっしゃっていました。ここが雪景色なれば、それもまた素敵でしょうね。

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掲げられているのは手紙。昭和30年代の消印が押してありました。

キャンプ地の視察だの、英王室戴冠式でのエピソードを2,3話してほしいとか、そんな日常の書簡です。それでも、戴冠式に列席しているなんてすごい話ですよね。

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まずは冷たいお茶から出していただきました。

今日のコースはお昼膳コース6,500円(税サ込)です。他に、夜と同じコース1万円・12,000円・17,000円・22,000円があります。

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先付はゴマ豆腐。雲丹、赤蒟蒻とともに。

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ここで飲み物を聞かれました。おススメはROCOCO Tokyo WHITEという限定ビール。「なぜ高級なお店ではビールをオーダーするのが恥ずかしいのだろう」という会話から生まれたラグジュアリービールです。

小売販売はしておらず、ミシュラン星付きレストランやファインダイニングでしか飲めないというこの1杯。コロナ禍の今はオンラインで入手できるようになっていますが、その価格から考えても1本1,400円での提供は、まずまず良心的だったように思います。

一言で表すならフルーティークラフトビールですが、苦みが少なくシャープ。確かにこれまでとは違う特別感があります。

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前菜は、ハマグリのジュレや鴨肉、ヤマモモなど。卵焼きは薄めの塩味で京都風。むかごも私好みです。

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こちらは追加オーダーの特筆すべき鱧の握りずし

12,000円以上のコースから入っているのですが、お昼膳コースでも1,500円プラスすると出していただけます。鱧の握りだなんてお目に掛かれない一品は是非。

朝獲れしか使わない鱧の中から、さらに厳選されたものを使うというこの握り。口の中でとろりと解け、山椒の味が舌に残るという、これまでの経験から形容するには難しい至福の鱧でした。 

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価値のあるものも惜しみなく使うのは器も同じ。金色の鳥の羽だけが見えるお椀にはワクワクさせられます。

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開けてみると、鱧、ジュンサイ、茄子が入ったお吸い物。蓋は裏側に見事な鶴が描かれています。蓋の裏というところが奥ゆかしい。ゆえに豪奢。

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お造りはまながつお。キュウリの花とともにいただきます。こんなに小さくてもやっぱりキュウリ。家庭菜園のキュウリの花も一度食べてみよう。楽しい一品です。

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お昼膳コースは鱧のしゃぶしゃぶまでいただけるお得なコースです。

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ぷりぷりの鱧をいただいたあとは、お出汁にポン酢を入れて飲むと美味しいと教わりました。だいだいのポン酢も手作りです。

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最後のご飯は葉山葵だったかな?こちらのお椀も美しい。

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お椀の中身はアサリのお味噌汁。

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デザートは黒蜜をかけていただくプリン。ぶどうとスイカなどが入っています。

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こちらは持ち帰ることとなったずんだのおはぎ。しっかり枝豆の味がして、とても美味しかったです。

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ずんだのおはぎを持ち帰ることになったのは、ある話に花が咲いたことにありました。この前日、古新聞が必要になってたまたま抜き取った記事に何となく気を取られました。和菓子を紹介した囲み記事で、そこに中津と書かれているのが目に入ったのでしょう。

改めて読んでみると、紹介されていたのは白いんげん豆と黒きくらげで作るという「巻蒸(けんちん)」という和菓子で、まさにこの筑紫亭の話。若女将にこの話をすると、是非ご賞味くださいと出していただきました。

きくらげにお醤油と組み合わせが和菓子に合うのかと思っていましたが、なんのなんの。蒸し羊羹に近い味わいで、コリコリとした触感も楽しく誰の口にも合いそう。でも、もうこれ以上は食べられません。それでおはぎはお言葉に甘えて持ち帰りにしていただいたのです。

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下の記事は筑紫亭でいただいたものですが、新聞記事も同様の内容。全国版で順次紹介されるそうで、早くも反響の注文が殺到しているということでした。こちらからも注文できるようです。

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このころ、女将が登場します。予約時から「いかに中津の鱧が豊かな自然で育ったか」など蘊蓄を聞かされ(携帯からかけているのになかなか電話が切れない 涙)、むむ?と思っていたのですが、ご挨拶だけでは飽き足らず延々と続く話がなんとも長い。堪りかねた相棒が切り上げてくれたときにはゆうに1時間が経っていました。

はじめから終わりまで、ほかの客人の気配は感じませんでしたが、入店時刻から考えても私たちが最後の客だったんでしょうね。でもその分、お出ましがデザートのときだったから食事には差し障らず、まだマシだったのかも。

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それでも、女将はとても知識が豊富で興味深い話ばかり聞かせていただきました。

例えば、その昔は関門海峡を通過するに堪えうる船はなく、この中津で荷が下ろされていたので、商いも文化もここから広がったという話。

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はたまた、せっかく海外の方からも絶賛される食文化を築いてきたにも関わらず、戦後60年もしないうちに欧米化させてしまったことへの憂い。

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そして、グルメ漫画の先駆者的存在「美味しんぼ」の71巻でも、築指定の葉も料理は取り上げられています。

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先のJR九州 新観光列車 36ぷらす3のお弁当依頼は、売込み営業をかけたわけではなく、先方から話をいただいたとおっしゃっていましたが、大学でも講義をしているそうで、知識の引き出しは無限に広がっているかのようでした。話が止まらないことを除けば、女将の話もここを訪れる楽しみのひとつとなることでしょう。

お会計は、お昼は現金一択。こちらでお支払いします。

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女将の長話のおかげで、余裕を見ていたはずの時間も押してしまい、中津城へは行けずに小学校前にあった大手門跡を見ただけ。

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福沢諭吉が19歳まで過ごしたという中津。旧居へも当然行けず、雰囲気のある町並みを通り過ぎて終わってしまったのは心残りでした。

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駅前にある福沢諭吉像。シェフを務める息子さんが慶応大学卒なのも、中津出身だからということに関係するかもしれません。

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天皇陛下もお出ましになったという筑紫亭。

ベストシーズンは耶馬渓の紅葉の季節かと思いますが、そのころは予約も困難かもしれません。交通渋滞と女将の話の長さにも留意して是非(笑

(投稿直前に全記事を誤って消してしまったので、書き直しはちょっと気力が萎えています・・・)

 

次回記事はこちら。

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