2023年(令和5年)4月
またしても、朝市目当てに高知を訪れています。高知で美味しいものをいただくには、夜に滞在するしかないというのが、数度訪れた末に行き着いた答えでした。ホテルと違って評判の良いお店が多くあり、日曜朝市でも見られる豊富な食材からも期待できるとみていいでしょう。
前回は、特典航空券は取れなかったので、全国旅行支援を利用して航空券+ホテルで予約したホテルの話を書きました。
美味しいものを食べるのが目的のはずの宿泊。ところが、半月前ではレストランの予約には遅かったのです。既に土曜日夜の人気店は満席で、断られること2軒。であれば、和食から視点を変えてみてもいいかもしれないと評価の高いイタリアンを予約してみました。コースはふたつあって安い方の8,000円。だって、高知で8,000円って高くない?高級店というよりも、地元民に人気って書いてあるし。
高知空港からバスで来るなら蓮池町通バス停下車し、東へ徒歩5分。さっきのどら焼き専門店からだと南へ5分ぐらいにある「La Prima Vorta(ラ プリマ ヴォルタ)」。
予約したときは、和食店2軒に断られたあとの夜で、ちょっと飲んでいたからどうして17:10なんて時間に予約したかも不明。たぶん、牧野植物園へ行った場合のバスの時刻から決めたんじゃなかったかと。
雰囲気はいいけど、中を覗いても誰もいないし、早過ぎる予約時刻は失敗だったかもと恐る恐る扉を開けました。
一番奥に通されましたが、ええ、このとおり一番客でした。大丈夫なのかな。
高知の実力を舐めている私は、イタリアンという選択もあってちょっと心配しています。和食だと食材の美味しさがわかりやすいけれど、バターやソースを使うフレンチやイタリアンだと取り立てて感動するレベルにはならないんじゃないかという気がして。
セッティングされたテーブルはセンスがいい。キャンドルに火を灯してくれました。
置かれているのはお店からのメッセージです。春から初夏へ移り変わる高知の食材を楽しんでくださいと書かれています。
裏側が本日のメニュー。高知県各地から集められた食材が紹介されています。でも、それぞれどんなお料理かはまったくわからないの。そして、特筆すべくは本日のキャンドルまで紹介されていること。
キャンドルアーティストとして活躍中のmowcandle村山匡史の作品。是非、リンクから彼の素晴らしいキャンドルアートをご覧ください。高知、やるな。
飲み物はビールから始めたいけれど、私は1杯飲むとお腹がいっぱいになってしまうのでできれば避けたい。特に日本酒もちょっと既に飲んでるし。クラフトビールは缶だと聞いたので、こちらをシェアすることにしました(各1,200円)。
選んだのは「弾丸」。しっかりとした苦味とキレのあるワイルドなタイプです。
さぁ、お料理のスタートです。このころには続々と人が入り始め、既に満席。
縞鰺(宿毛) ~鳴門若布 アヴォカド 玉葱醤油~
玉葱はフライにしたものとスライス、そして醤油漬けにしたものを合わせ、鳴門若布はあえて温度を高くして絡め、アボカドには白味噌を足してぬた風に。お、覚えられないけど、なんて工夫を凝らしていることか。この丁寧な仕事に、完全に虜になってしまいました。
そんでまた、このパンが美味しいのよ。右がお店での自家製フォカッチャ。左がセブンデイズホテルの隣のブーランジュリーと言っていたのでおそらくPOUSSER(プウセ)のバゲット。
鰆(須崎) ~空豆 浅利 揚げもやし~
メニューを見ただけでは何が出てくるかわからない素材の羅列。鰆のポワレに空豆のソースと、新玉葱にアンチョビとニンニクのソース。真ん中の緑は芹。春トマトはオーブンで少し水分を飛ばしてあるそう。
もうひとつのソースは浅利と揚げもやしのペースト。ブラックオリーブとニンニクが入っています。どれといただいても鰆に合うし、なんといってもこのひと切れでどんだけ楽しませてくれるのか。そしてまた、料理人もまたサーブしてくれるのだけれど、その説明がなんとも楽しそう。ここでの仕事が好きでたまらないというのが伝わってきます。
ビールの次は何にしましょう。グラスワインだけでなく、日本酒は久礼と文佳人もあるよ。全部見なかったけれど、アルコール類はかなり豊富なラインナップ。
赤ワインはフランスだけでなくスペインワインもあり。
でも、せっかくなのでイタリアワインから選ぶことにしました。メニューには魚が多いけど、やっぱり赤かな。
ベネチアを含むヴェネト州のワインをピックアップ。カベルネソーヴィニヨン100%。でも、よくよくメニューを見返すと思い出深いプーリア州のワインもありました。魅力的だな。
桜エビ ~絹さや 菊芋 ディルの花~
そのまま桜エビです、との説明。そりゃもう濃厚な桜エビのポタージュ。菊芋のピクルスにレモンの酸味がプラスされたペーストが底に敷いてあります。実は私、絹さやはあまり好きではないのですが、カリッと生でこのポタージュにとても合っていました。
白甘鯛(足摺) ~筍 蕗 こごみ えびな 青のり醤油~
岐阜県産龍の瞳という米を使った山菜のリゾットは、浅利の出汁で炊いて敷いてあります。そこへ白甘鯛をのせ、青さ海苔を攪拌させたふわふわのお醤油をトッピング。お醤油って攪拌させると白くなるんだって。柔らかな醤油の味が甘白鯛に絡み、口どけが柔らかい。
四万十ポーク ~独活味噌 コシアブラ(鏡村)~
このお皿の前にコシアブラ摘みの体験をさせていただきました。山菜の女王コシアブラはビルの2,3階もの高さにも育ち、どこで採れるか採取者はシークレットにしているそう。オーナーを気に入ってくれている人が連れて行ってくれて、ご自分で採取したというコシアブラの枝をお披露目いただき、ポキッと折るなんてことをしました。
そのコシアブラを天婦羅にして、備長炭で焼いた四万十ポークに添えてあります。このお皿ぐらいでしたね。何が出てくるかメニューから想像がついたのは。新じゃがいもと独活のソース、そして米味噌のチュール。チュールって何?薄いラングドシャっぽいのがそれと思うんだけど。んで、この四万十ポークがめちゃくちゃ美味しいの。ふつうの豚肉とは全然違う。甘味っていうんだろうか、なんというか、これまで食べてきた豚とは違う種類の肉でしたよ。
大紋羽太 ~春キャベツ 木の芽(鏡村) 大葉新芽~
ね、メニューを見ても何が出てくるかさっぱりわからないでしょ。パスタが登場。
木の芽と大葉のように香りの強い2種を合わせると、どっちかがかすんでしまうのではないかと思ったのですが、まったく。しかも木の芽とパスタというのは目からウロコの使用法でした。
大紋羽太(おおもんはた)は、西日本を中心に出回る高級魚だそう。いや~ なにからなにまで脱帽なんてもんじゃなかったです。イタリアンも奥が深い。
デザートの前に、お茶を選ばせてもらいました。私たちは揃って土佐紅茶。
土佐紅茶+ビスコッティ
でももうね、ほとんど記憶にありません。日本酒を引っかけてやって来て、ハイテンションで食事を続け、ワインを空けたものだからヨッパ満開。
イタドリの酸味がアクセントになっていて美味しい。おいりのカリッとした食感が印象的。
〆 ~焼き菓子(蓬・四万十きな粉)~
この台もきっと高知県由来のものだったんだろうな。フィナンシェの上に蓬の新芽が挿してあります。
塩味のアクセントがあり、温かいのがまた嬉しい。
最後にお手洗いもご紹介。
お手洗いがきれいな料理店は美味しいという持論があって、ここもそうでした。
この楕円のボウル、スタイリッシュですね。
食べログ評価は良く、多少期待できるかとは思っていましたが、まさかここまでとは思いませんでした。高知各地の食材を中心に工夫を凝らし、料理人の豊かな想像力とチャレンジ精神で生まれてきた数々の料理にすっかり魅了されました。
そしてなんといってもこの安さ。お会計を間違えたのかと思いました。これでこのクオリティ。次回は今回行けなかった和食店と思っていましたが、ここの魅力あっては他へ行っている場合じゃないかも。季節ごとに訪れたいお店でしたよ。高知市民が羨ましい・・・!!!
8,000円コース×2+ビール1,200円+ワイン4,800円=22,000円
そして何よりも素敵なことが、このあたりにはいっぱい美味しいお店がありますから、是非あちこち行ってみてくださいとおっしゃるところ。イチコロでした。是非、わざわざ高知へ用事を作って行ってみてください。食事のためだけに3泊ぐらいしたいわ~