2023年(令和5年)5月
毎月安曇野に通い始めて半年。所用を終えたらお蕎麦を軽く食べて宿へ向かうということを繰り返しています。今回の特急あずさでのお供は、駅で見つけた200mlのスパークリングワインと、DONQで買ったグラタンパン。他にも比良山荘の山鹿ロースや川場村のチーズなども持参して、少しずつ車中の過ごし方も変わってきています。


安曇野はあいにくの曇り空。後方に見える常念岳も姿を隠しています。
所用を終えたあと、珍しくタクシーで山麓線沿いにあるレストランへ移動しています。12時から一斉スタートのランチが目当て。
華やかなカラーも織り交ぜた店内。フレンチレストラン「マサヒロ・ニシムラ」にやってきました。


テラスへの窓が開けられ緑豊かな庭が見えます。本日の予約は2組。壁には奥さまのご尊父が描かれたという絵が掛かっています。空に向かって梯子が伸びていて、月に向かう階段のよう。
料理は昼でも夜でも7,800円一択(時期によって違うみたい。コロナ禍での統一かも)。アルコールはビール中瓶880円、グラスワイン890円から。
特急あずさ車中でさんざん飲んできた私たちは、ボトルワインでスタート。味にはうるさくないので、ハウスワインの4,700円でOK。
南フランス、ローヌ地方にあるドメーヌ家の造るワイン。グラスも美しい。


そもそも宿で食事をすることを考えなければ、美味しいものに出会える選択肢がもっと増えるということにまったく気づいていなかった私。今後は外でいただくことを重視することに決め、今回はリサーチした中でもっとも気になったお店を予約しました。
前回の高知でもそうでしたが、地方のレストランは安価で美味しいということも発見済み。こんなに足を運んでいる安曇野でも、早くに気づいていればよかった。
果たしてそのスタート。もうね、メモしきれないほどの食材を使っていて、なにが何だったのか記憶にないほど斬新なお料理の数々でしたよ。こういうのをイノベーティブと呼ぶんでしょう。画像は店内が自然光だけだったので暗めですが、繊細でかつ華やか。
静岡のイサキの上には紫キャベツに似たトレビス。あとは静岡産ホワイトアスパラ、グリーンアスパラ、そしてヨーグルトクリーム、山羊のチーズとだけメモってる。この美しさよ。苦手なはずの山羊チーズは、前回デパ地下で購入したものと同じく、獣臭や癖をまったく感じさせません。
いったい何が前菜で何がメインかというほど最後まで美しい盛りつけが続くのですが、次はフランスのフォアグラのクリーム、鳴子百合、天使の海老、蕗の薹のババロア。ナルコユリは山間部に自生する山菜です。
また、美味しかったのが全粒粉のパン。もっちり。
お次のスープの中には、タコ焼きがひとつ。ん?
まさにたこ焼き器で作っているというこのボール状のものの中には桜エビが入っています。スープは魚から取ったお出汁。
ほら。割ってみると桜エビのきれいなピンク色が見えます。
続くこれはいったい・・・何料理と評すればいいのでしょう。前菜は終わったよね?
ホタルイカのクリームに、コシアブラとこごみのゼリー寄せ、そして両脇にはユキザサ。自家製生ハムと山椒の木の芽がのっています。美的センスの塊に圧倒されます。
「塊」といえば旁が同じ鬼である「槐」という木が入口脇に植えられていました。エンジュと読みます。縁起のいい落葉大木で、街路樹などにも使われています。ここでは成長を抑える工夫として、くねっと曲がった樹形が作られたのでしょうか。くねくねの槐。
パンがもうひとつサーブされました。こちらは海藻を練り込んだパンです。シェフの探求心は留まるところを知りません。
魚料理は静岡の甘鯛。添えられたのは手打ちのトルテニーニ。前に松本城近くのお蕎麦屋さんそば処もときでいただいた鞍掛豆と蕨も見えます。そして新海苔のソース。
透き通るように美しい甘鯛の断面。そしてウロコはつけたまま揚げてあります。
見よ、この美しく立ったウロコ。パリッパリで身を引き立てくれます。いや、むしろ身がウロコを引き立てているといってもいいほどの食感と香ばしさとお味。
ラストの肉料理は豚肉2種。北海道ポークで、マンガリッツァポークというそうです。ハンガリーの国宝豚なんだって。
手前が塊のままローストしたもの。ターメリックで下味をつけたのかというようなエスニックな香辛料を含んだお味。奥が煮込み。筍、スナップエンドウ、アスパラガスなどと共に。ボリュームもたっぷり。
和歌山の柑橘、サンフルーツのソルベ。
ボリューミーな豚料理のあとの口をさっぱりとさせてくれます。
これですべて終了かと思っていたら、デザートはさらに続きました。
ルバーブといちごはコンポートに、ニセアカシア、虎杖はどうしてあったんだったかな。プリンのようなものも見えますが、メモを取り切れていません。丸いのはキャラメルアイスクリーム。
コーヒーか紅茶を選べます。
最後は梅紫蘇の泡にスイートスプリングのジュレ掛け。
ふわっふわの泡の上にジュレ。添えられた草木はお庭のものが使われていました。最後まで盛りつけが美しい。
最初に挙げた4月高知訪問時のイタリアンも素晴らしかったけれど、こちらも勝るとも劣らない。美しさでいえば他に追随を許さないといってもいい美しさにすっかり魅了されました。お味もそれぞれビジュアルどおり繊細で斬新、それでいてなんというか奇をてらっているというよりは創造力の結晶。ともあれ、また季節をかえて訪れたいお店となりました。
コース7,800×2+ボトルワイン4,700=20,300円
2時間半ほどかけて食事を終え、穂高駅までは歩いて戻りました。1時間ほどかかります。目当てはこのお店「歓びのプレリュード」。チェロを弾いている彼を見るたび、私は桑田佳祐を思い出すんだが。
2021年4月にオープンした高級食パンのお店です。以前に高級食パンにはまったことはあったけれど、世間のブームと同じく瞬く間に興味をなくしたカテゴリー。
だけど、以前もお店に入ったことはあったのですが、買わずに帰ったことがちょっと心残りだったので、今回は買うぞ、ということで。


そうはいってもこの袋を持って歩くのはちょっと恥ずかしい。生食パンというよりは、高級食パン。焼いた方が俄然好みです。2斤サイズで928円(税込)は高くないんじゃないかな。季節ごとに限定商品もあるようです。
こちらも機会があれば是非どうぞ。