英語も話せないし飛行機も苦手、それでも個人手配で海外旅行

交通費嫌い。飛行機は苦手だけどヨーロッパ大好き。空港ラウンジ目的でSFC修行済み。休暇の取れない勤め人。

【ルクセンブルク】世界遺産の要塞「ボックの砲台」

2023年(令和5年)12月30日(土)

 

年末年始、ルクセンブルクを皮切りにヨーロッパ10日間の旅行です。前回はルクセンブルク唯一の世界遺産の構成要素である旧市街へ渡るアドルフ橋や露天市場で人気の丸鶏のロースとの話などを書きました。

fuwari-x.hatenablog.com

 

ルクセンブルク唯一の観光地といっていいボックの砲台(Bock Casemates, Casemates du Bock)に到着しました。今回の旅行では、オンライン予約ができる観光地はほぼすべて日本で予約しています。でも、ボックの砲台だけは雨の日を避けたほうがいいと思い、現地でチケットを取ることにしていました。現地近くでオンライン予約しようと思ったら1時間後で、窓口購入も同じく1時間後のチケットでした(大人8EUR)。なお、冬季閉鎖と書かれているものもありますが、2023年末は確かに開いていました。

 

ボックの砲台は963年にアルデンヌ家ジーフロイト伯爵がここに居城を構える際に要塞を築いたのが始まりです。もともとペトリュス渓谷の断崖があり、天然要塞でもあったかと思います。

 

今の地下壕は18世紀にオーストリア軍が建造したものです。そして一帯は、その古い街並みと要塞群としてルクセンブルク唯一のユネスコ世界遺産に登録されています。

 

Robert Schumanレリーフがあったので作曲家のシューマンかと思ったら、ルクセンブルクに生まれ、のちにフランスの外相、首相になったロベール・シューマン(1886-1963)でした。

 

オーストラリア軍が建造した城の橋(Pont du Château)からボックの砲台に出入りできるようになっています。砲台と橋のあいだに見えるスロープが砲台の入口です。城の橋ができる前は木造の跳ね橋で、敵の進行を食い止め、旧市街を隔離できるようになっていました。

 

砲台の上へは自由に入場することができます。その下に見える抜け穴から時折人の姿が見えるので、入場すればここを通れるのでしょう。洞窟好きの私には格好の場所です。

 

アルゼット川の向かいに位置するのが、ルクセンブルクといえば必ず見られるノイミンスター修道院文化会館。今は教会の建物を改築し、展覧会やコンサートなどのイベントを行う施設になっています。

 

ボック砲台からの眺めが記されています。1859年に造られた鉄道高架橋には今も電車が走っています。

 

ちょうど上の絵に近いのがこちらの風景。砲台を下るとStierchen橋を渡ってノイミンスター修道院文化会館へ行けるようで、美しい川沿いも散策しようと思っていました。晴れていれば待ち時間に降りてみることもできたと思いますが、寒さとその高低差にビビって(また上らなくちゃいけない)動く気にはなれませんでした。

 

案内には散策経路も紹介されています。こちらがノイミンスター修道院文化会館西側のコースで、旧市街との高低差を感じながら歩く王道コースかと思います。

 

もうひとつがボック砲台の北側に広がる史跡を回るコースのようです。でも、今になっても見返してもこの地図ではなかなか位置がわかりません。

 

入場時刻まで中途半端な時間しかなかったので、砲台の上へ行ってみました。

 

そこから見ると、旧市街をぐるりと環状城壁が囲んでいるのがわかります。高低差がもっともわかりやすい場所と言えるでしょう。散策コースの1枚目は、まずこの断崖の上を歩くのだと思います。

 

そして、グルント地区(Grund 低地の意味)と呼ばれる川のそばのパステルカラーの家が並んだところをぐるりとまわって戻ってくるはず。青空であればもっと美しかっただろうな。

 

ボック砲台には入場前にもいくつかの抜け穴に行くことができます。

 

これぞルクセンブルク

 

予約時刻は12時半でしたが、12:20頃から入場できました。回転ドアを開けて入ります。

 

真っ暗な地下遺構。スロープを上り、折り返し吊り橋を渡ります。

 

吊り橋の下は当時のままの状態だと思うのですが、肉眼では見えてもライトの反射でうまく撮ることは難しい。

 

すぐに外へ出て階段を下ります。

 

オーストリア軍が造った地下壕の側面図と上面図は以下のとおり。最初の地下道はスペイン軍が掘ったようですが、オーストリア支配下になったのち、フランスの軍事建築家、Sébastien Le Prestre, Seigneur de Vauban(セバスティアン・ル・プレストル・ド・ヴォーバン)の設計で拡張整備されています。

 

このヴォーバンは53の城塞包囲攻撃を指揮したと言われ、1684年ルクセンブルクを攻略したのもこのヴォーバン。「落ちない城はない」と言わしめたほどの要塞攻城の名手で、軍事技術者の中でもっとも有名な人物として知られています。

 

またヴォーバンは、150の要塞を建設または修理し、そのうち12箇所の要塞がヴォーバンの防衛施設群としてユネスコ世界遺産に登録されています。

 

要塞には約50門の大砲と1,200人の兵士が収容できたそうです。

 

ノイミンスター修道院文化会館が見えます。

 

隣の砲門からは人が見えました。

 

最初に私がボックの砲台を外から撮ったのはあそこからでした。今は中から見ています。環状城壁の様子がよくわかります。

 

反対の北側の砲台から外を見ると、抜け穴が並んで見えました。この要塞は1794年のフランス革命時には7ヶ月に渡るフランス革命軍の包囲戦に持ちこたえ、「北のジブラルタル」と称えられました。しかも指揮を執ったのは当時82歳とご高齢のBaron von Bender(フォン・ベンダー元帥)

※ ちなみに、ジブラルタルはスペインの南東端に突き出た小さな半島で、対岸のモロッコまで24km、地中海の西端に位置する重要拠点として各国が争奪戦を繰り返したイギリスの飛び地です。1779年フランスとスペインがイギリスからの奪取を目指してから包囲戦を繰り広げましたが、4年かけても落とせませんでした。

 

北側の街並みです。美しい庭園のほか、丘の上にはいくつもの史跡があるようです。ここがもうひとつの散策コースとなっているのでしょう。新市街の近代的な建物も見えました。

 

砲門にはいくつか大砲も設置されていました。ルイ14世時代の大砲がフランスから寄贈されているようですが、これでしょうか。

 

ここでは第1次、第2次世界大戦でも市民を守り、地下シェルターとして35,000人が空襲から逃れていたそうです。

 

左右に洞窟は分かれています。当時全長26kmあったそうですが、逆に逃げ道がない要塞に籠る怖さもあったと思います。

 

ベトナムへ行ったときクチの地下トンネルに入りましたが、閉所恐怖症の私は数mのその距離がとても苦しかったことを覚えています。それに比べて天井高があるとはいえ、旧市街の地下であっても、グルント地区より高い位置にあって外が見えるので、どんな避難生活だっただろうかと思います。

 

最後に狭い階段を降りる箇所がありました。人ひとりがようやく通れる幅しかなく、螺旋状になっていて先が見えない。上から人が下りてくるので引き返すこともできない。かなり長い階段で、息苦しく泣きそうになりました。

 

そこを抜けさえすれば、ここに出てきます。城の門の橋脚部分です。螺旋階段は、この橋脚が壊されたときのための別ルートとして整備されたものだったようです。

 

城の門の端から退場です。螺旋階段は橋の向こう側にあり、他に抜け道があるのでしょう。どのようにどこを歩いていたのか、出て来てもわかりません。全部歩けたのかも不明。中は薄暗いので、せめて晴れた日の方が快適に見学できると思います。

 

名残惜しんでボックの砲台を後にします。所要時間は入場して40分ぐらいでした。

 

すでに13時になってしまったのでノイミンスター修道院文化会館の方へは行かずじまい。ランチの後か、翌日午前中は時間があるので、また来られると思っていたのです。

 

なお、砲台入口にはツアーバスが停まっていました。憲法広場の下にもペトリュス砲台があり、そこを見学できるようでした(大人15EUR)。この情報はまったく知らなかったので残念でしたが、恐らくガイド付きツアーのみで、フランス語・英語・ドイツ語・ルクセンブルク語で開催されており、安全上の問題のためかその言語ができない場合は断られていました。

 

ランチのはずが、前回書いたようにギヨーム2世広場で丸鶏を購入してしまったので、トラムでホテルへ戻りました。

 

トラムはカラフルな照明が施されていてとてもきれいです。

 

座席の背もたれにもきれいな照明が入っていて、車内もとても清潔でした。

 

丸鶏のローストチキンは半身で7.4EUR(1,187円)。クレジットカードが使えました。やはりもも部分が格段に美味しく、胸はあっさり。

 

タルト4個各2.1EUR。温めると言ってくれたのですが、いつ食べるかわからないので断りました。温かければさらに美味しかったはず。

 

オリーブ4EUR(これは一部)。塩味控えめのとても美味しいオリーブで、期待以上でした。

 

前日からの疲れが残っていたのか、食後、夕方から寝てしまいました。うつらうつらしている中、翌日17:15発で予約していたLUXAIRからチェックインの案内が入っていました。ルクスエアーはルクセンブルクの航空会社です。ええ。確かにチェックインの案内でした。さらにそのあとにはアップグレードの案内も入っていたのです。なのに!!!今回1回目のアクシデント発生です。