2023年(令和6年)10月28-29日(土-日)
10月21-22日の縦走が適わなかった直後、同じ週末からの北アルプス縦走のお誘いを受け、常念乗越から北アルプスパノラマ銀座と呼ばれる登山者の人気ルートを通って燕山荘に到着しました。前回は、歩くのに精一杯でほとんど記憶にないその縦走を振り返っています。
2泊目の燕山荘は全国でも1,2を争う人気の山小屋。1921年(大正10年)開業は常念小屋から遅れることわずか2年。どちらも100年超の歴史を誇っています。ハイシーズンは予約も取りにくいのですが、気軽に登れる北アルプスでありながらおしゃれな山荘といったところも支持されているのでしょう。常念小屋に比べると、激込みといっていいレベル。
それでも2人用の空間をひとりで独占できました。下段が私の寝床。いや~ 私、ここに他人と2人は無理です。着替え時の衣擦れの音とか気兼ねしまくりそう。
時刻は17:06まで飛びます。スマホの充電が切れてしまい、充電器も厳冬下で放電してしまったようで、100円で利用可の山小屋のコンセントに挿していました。その間、所在なげにしていた外国人登山客に声を掛け、サンルームでビールを奢り、しばし談話。スペイン、バレンシアから来たそうで、地元ピレネー山脈を登った話などを聞きました。
17:07 日没時刻が近づいたので外へ出ると、空がピンクに染まっていきます。
雲海の向こうに消えていく・・・でもこれ、安曇野方面だったと思うんだよね。燕山荘から東側になっちゃうんだけど、なんでだろ。山の上での方角っていまひとつわかりにくいからね。
17時半からは食事時間。山小屋の食事ってハンバーグが定番なのかしら。2夜連続です。煮物などもあってかなり充実度が高く、食事もまた評判だというのも頷ける。
ガイドさんにはビールがつくそうで、飲まないからといただきました。山の上で2杯目のビールとはなんとも贅沢。でも、考えたら飲まないわけないよね。気のつかない、気の利かない自分に自己嫌悪。
食事の後半からはオーナーの講話とホーンの演奏があります。登山客が捨てる残飯のために烏が稜線上まで来るようになって生態系を脅かしている話、熊や雷鳥の話などで、気軽に登れる山だからこその啓蒙活動をされているのでしょう。
18:30 この日は満月。左下に安曇野方面の街の明かりがわずかに見えています。
19:55 消灯時刻の20:30が近づいてきているので、最後にもう一度お月見です。
うっすらと積雪があり、凍えるように寒い外。誰もが秒で山小屋に戻っていました。20:30就寝、明朝は5時起床です。燕岳にご来光を拝みに行く人は確か4時半発だったかと思います。
翌朝5:18の東の空です。安曇野から松本方面の街の明かりの向こうに、前夜には気づかなかったアレが見えています。そうか!見えるのか!
5:26 暁の中のアレにお気づきでしょうか。画像右に見えるソレです。
正面に持ってきました。富士山です。夕焼けの方が赤く染まると言いますが、なんのなんの!なんとも美しい光景です。眼下に安曇野の町の明かりも見えています。
さすがは富士山。でも、前日に話をしたスペイン人は、たぶん富士山そのものの存在を知りませんでした。朝食時に会ったので、富士山が見えると教えたのですがきょとんとしていたのです。あとで調べて喜んでくれたかな。
5:30 ひとまず朝食に戻ります。下山を残すだけですが、2,705m地点から1,454mまでいっきに下るのでしっかり食べます。
5:47 再び外。満月のまままだ沈んでいないので、十六夜ではなく十五夜でいいのかな。西側の空に残っています。
向こうに見える稜線は裏銀座と呼ばれる登山ルートです。3,000m級は世界的に見ると低山かもしれないけれど、この険しさと美しさに畏怖の念を抱く。
裏銀座を縦走していくと槍ヶ岳に到達し、上高地に下山していくのが一般的。表銀座に比べてさらに難易度が高そうなことが一目瞭然です。
槍ヶ岳から表銀座を縦走し、大天井岳を抜けていくコースはこちら。「く」の字に稜線を歩いて行く雰囲気がなくわかる画像。ただ実際に歩くまで、いくら説明されてもわからなかったな。
前日歩いた稜線を目で追います。正面に大天井岳。歩いたことがあれば大天荘もわずかに目視できるでしょう。
手前の稜線から大天井岳へ向かい、そして左に折れて東天井岳、横通岳。麓からはほとんど隠れて見えないルートですが、燕山荘からは確認できます。嗚呼、本当にこの道を私が歩いたのか。
5:53 再び曙の中に浮かび上がる富士山を燕山荘の展望台から眺めます。
6:01 同じ場所から再び裏銀座の稜線。日没時とはグラデーションが逆で、これもまた美しい。
6:10の東の空。日の出時刻が6:08なので、ちょうど顔を出したところです。
日の出と富士山の位置関係はこんな感じ。富士山の上に見えるのは月ではなくたぶん、スマホの為せる業、というかバグ。
5:54 展望台から燕山荘、そしてその向こうに見えるのが燕岳。テント場には2張(緑と茶色)見えています。
1日平均15,000歩を歩く私でも、山は素人。ましてや北アルプスなどという本格的な登山ができるチャンスはもうないでしょう。めぐりあわせに感謝。そしてたった一度のチャンスに美しい光景を見せてもらえたことにも、ただただ感謝。胸がいっぱいの3日間でした。
6:13 下山開始です。燕岳への上りルートは三大急登と言われるほどの急登で、それを下っていくのだから気が張ります。
6:28 燕山荘側から縦走すれば、槍ヶ岳をずっと眺めながら歩けるはず。とはいえ、私なんかでは足元ばかり見て歩くのに集中するので、小休憩を多用してチラ見することになるのかな。
6:40 ほんの少しの差で、山の色が変わってきています。大天井岳にも槍ヶ岳にもお別れ。この週で大天荘の営業が終了するので、表銀座コースの賑わいは次に小屋が開く6月半ば以降となるでしょう。
7:02 合戦小屋。営業は9時からなのでまだ開いていません。途中にも休憩場所があるので、急登とはいえレジャー感があるのがこのルート。
最後に中房温泉9時発のバスにギリギリ間に合いそうだったので急いだため、画像は車窓からの1枚のみ。2時間弱での下りは大きな岩場が多く、足への負担もなかなかのもの。登りも大変だけれど、ひたすら下るのも飽き飽きで、かといって気を引き締めていないと簡単にこけてしまいそうでした。
9:58 穂高駅からの眺めです。雪の片鱗も感じられない穏やかさ。
JR大糸線の車窓からわずかに見える稜線を目で追いながら帰宅の途につきます。
特急あずさでは3点セット。
買って帰るのは毎度の黒姫高原牧場のむヨーグルト。
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ただ夢中で歩いた、それだけのような気がします。もう一度チャレンジしたいと言えるだけの気力は、半年経った今もまだありません。本当に手強かったです。