2025年(令和7年)6月14日(日)
毎月飛行機に乗ろう!というコンセプトで選んだ6月は足立美術館への再訪。前回は羽田空港ANA SUITE LOUNGEから足立美術館までの話を書きました。
月山富田城を向かい側の山にある勝山城から眺めたかったけれど暑さに負け、足立美術館へ戻ってきています。せっかく宿泊しての見学なので人が少なくなってからゆっくり見たかったのですが、チェックインまで時間もあるので先に見学しましょう。バス通りから1本入ると足立美術館の新館があり、本館とは地下で繋がっています。
道を挟んで向かいが本館。アソビュー!経由でチケットを購入しましたが、割引はありません。現地では現金でしか購入できないかと思ったのですが、クレジットカードも利用可でした。荷物はコインロッカーに預けられます。100円硬貨が必要ですが、あとで返却されます。
金箔や螺鈿などで作られた硯箱や箪笥などの陳列から始まり、庭園のスタートはこの苔庭から。多くの人が楽しむのは左に見えるガラス張りの部屋からの眺めです。
杉苔を主体とした京風の雅な庭園で、ゆるやかな曲線を描いた苔と緑と白い砂が美しく対比されて造られており、紅葉の秋は一層美しいようです。斜めに植えられた赤松も表情豊か。
先へ進むと創設者の足立全康の銅像があります。2003年から22年連続、アメリカで発行されている日本庭園の専門誌 The Journal of Japanese Gardening のランキングで日本一の評価を受けており、前年の「21年連続」の表示がきちんと22年に変更されていました。また、フランスのミシュラン・グリーン・ガイドでも3つ星を獲得しています。
「庭園もまた一幅の絵画である」というコンセプトで作られた5万坪の日本庭園。四季折々に違う表情を見せてくれます。私が冬に再訪したかった理由もこのポスターをご覧になればおわかりいただけることでしょう。
ガラス越しに見える枯山水庭にやってきました。自然との調和が美しい足立美術館の主庭です。
枯山水とは水を用いないで自然の中の水の動きを表現する日本庭園の様式をいいますが、中心に配した立石を峻厳な山に見立て、そこから流れ落ちる滝水が白砂の海へと流れ込む様子を表現しています。
そして、そこから流れる滝水がやがて大河となる雄大な山水の趣を表しており、それが白砂が担うところなのでしょう。尼子十砦が取り囲む周囲の山を借景にもして、造り上げられていることに、前回は気づいていませんでした。
実は、気づいたのは今回帰って来てからのことでした。奥にうっすら滝が見えていますが、これは那智の滝をイメージして造られたものだという記載があります。
それがこちら。横山大観の「那智乃瀧」をイメージして造られた人工の滝だということは前回にも知っていました。でも、庭園は敷地内で完結していると思い込んでいたので、前回アップした滝(最後から2枚目の画像)がこの滝だということとは繋がっていなかったのです。そうか、あそこも足立美術館の土地ということか。壮大な構想だなぁ。
坪庭を通って、さらに先へ進みます。暑い日にはホッとする涼やかな木陰ある庭。
喫茶室の蕎麦を通って到着するのが池庭。
周囲との調和を考え、新しい感性と伝統的な手法を用いて造られた庭園です。今日は鯉の姿がおとなしめ。
煎茶室は戦後復興期に婦人運動家として活躍した芦屋市の広瀬勝代さんからの寄贈、その他、松江市の中学校移転に伴って寄贈された他行松なども配して造られていると書かれています。
この池の傍らにある建物からの景色もまた人気スポットのひとつ。ここをゆっくり見たさにさぎの湯温泉での宿泊を考えたぐらい、絶え間なく人がいる生の掛軸が見られる場所です。
向こうにある庭を借景にするコーナーですが、庭に人が大勢いるので写り込んでしまうのでシャッターチャンスは少ないです。
掛軸というのなら、これぐらいズームアウトしてみるほうがいいのかしら。少し角度が違うだけで石灯籠も入るのですが、代わりに屋根も見えちゃうわ。
まだ生の景色はこの建物から見られるのですが、景色のもととなる庭へも行ってみましょう。白砂青松庭です。横山大観の名作「白砂青松」をイメージして造られたという庭。白砂の丘陵には右に黒松、左に赤松を配置し、対照的な調和美を生み出しています。
右側奥には、先ほど説明した亀鶴の滝が見えます。借景が損なわれたら成り立たない壮大な庭園だと考えると、一層観る楽しみが増えます。
左側の向こうに見える山も見事に調和していて、庭園を見る目がなかったとしてもじゅうぶんその美しさを堪能できるはず。
もう一度、生の掛軸を見た建物まで戻ってきます。掛軸の奥には生の衝立の額絵が見られる椅子があるの。椅子が空いていて、人がいないのが条件の場所。いや、絵になる人がいるならそれもまたアリなんだけどね。
生の衝立がこちら。掛軸と同じ白砂青松庭を切り取った風景。
同じ椅子に座ったまま右を向くと池庭の方向。こちらも生の額絵として風景を切り取ることができます。
でも、座る位置で見えるものがこんなにも違う。たぶん煎茶室が見える位置に座れるといい構図になると思うのだけど、思うようなタイミングで座ることができません。いずれも「庭園もまた一幅の絵画である」を体現する仕掛け。
北大路魯山人のコレクションを展示している魯山人館が2020年に完成したので、こちらも見に行きました。現代の陶芸家の多くは、魯山人の影響を受けているんだろうなぁという個性的な作品多数。備前焼も瀬戸焼も、織部焼もなんでもござれという稀有な人です。
それにしても、足立全康といい北大路魯山人といい、年表を見るといったい何度結婚していたことか。足立全康は死別ですが、魯山人は結婚と離婚の繰り返し。さすがは芸術家といったところかしら。
本館の見学を終えたら、地下道を通って新館の現代美術を見に行きます。こちらは撮影自由で日本美術院の作品展が開催されていましたが、すっかり疲れてしまったので足早にさらっと見たのみ。現代美術はまた違った世界が広がっていました。
見学に要した時間は1時間半ほど。オーディオガイドを使えば、もっとそれぞれの作品の背景などがわかってよかったかもしれません。再々訪はあるかな。やっぱり冬が憧れなんだけどな。