英語も話せないし飛行機も苦手、それでも個人手配で海外旅行

交通費嫌い。飛行機は苦手だけどヨーロッパ大好き。空港ラウンジ目的でSFC修行済み。休暇の取れない勤め人。

【青森】47都道府県コンプリート!JR五能線の旅 圧巻の五所川原立佞武多の館

2021年(令和3年)10月

 

緊急事態宣言が解除されたので、47都道府県コンプリートの最後の県となる青森を制覇しにやってきました。前回はリゾートしらかみでの津軽三味線を楽しみ、五所川原駅で下車して立佞武多(たちねぷたかん)へ向かったところまでご紹介しました。

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五所川原駅へは、JR東日本のってたのしい列車のひとつリゾートしらかみに乗車して4時間12分で到着しました。長い長い五能線の旅は乗車前に退屈するかもしれないと心配していましたが、あっというまだったと言っていいほど楽しめました。青森秋田間を往復する人もいると聞きますが、刻々と変わる空や海も含めた景色を飽きることなく堪能できると太鼓判を押します。

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さて、15時を回った五所川原駅は、人っ子ひとり見当たりません。2005年(平成17年)の合併で青森市の半分ほどの面積になった五所川原市ですが、人口はその1/5にも満たない5万人ほど。バブル崩壊までは百貨店3店が連立する地方都市でしたが、徐々に撤退したあと市が衰退を食い止める努力を続けています。そのひとつが、私が今回旅の中心に据えた立佞武多の館の建設。これには付随して区画整理や電線埋設化などが必須だったので、特色のない味気ない駅からの道なんて言っちゃあいけなかったんです。

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立佞武多の館は数少ない背の高い建物のひとつです。ここまで大きい施設だとは思ってもみませんでした。夏祭りにかける熱量が伝わってきますね。

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でも、青森のねぶた祭りと言えば、誰もが知る有名なお祭りですが、このたちねぷたとはいったいなんでしょう?ねぶたとも、ねぷたとも聞きますけど・・・?

ねぶた祭りというのは青森各地で行われているんですね。代表格の青森ねぶた、弘前ねぷた、そして、は方言の違いのようでした。それぞれ山車灯籠を曳くところは共通しているようですが、その形は地域によって違うらしい。たちねぷた五所川原ねぶた祭りで曳かれる山車灯籠ってことですね?

 

とにかく、立佞武多の館に入ってみましょう。入口のマットからながーく作られていて、平成20年度制作の山車灯籠が描かれています。

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事前に調べたところによると、この立佞武多の館はたった3基のたちねぷたが展示されているに過ぎず、しかもスロープをぐるぐる回って下りるだけだそう。見学所要時間は20分と書いている人さえいます。4時間もかけてきた甲斐はあるんだろうか?

入館料は、JR五能線リゾートしらかみ乗車特典で、650円⇒580円になります。

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入り口脇に小型のたちねぷたが展示されています。たちねぷたというのは、私たちが知る横に広い山車灯籠の青森ねぶたや弘前ねぷたとは違い、背の高い人形型です。駅の看板には23mと書いてありましたが、どんなものなんでしょう?

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入ってみましょう。

おお~!!!入るとどかーんときました。思ったより大きい!!!こりゃすごいわ。こんな背の高いのが町に出たら、どんなにすごいんだろう?能代で見た天空の不夜城はこれより高いそうですが、こちらの人形型は躍動感があって大きさ以上の迫力を感じるんじゃないかと思います。

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まだまだじっくり見ていたいところですが、右側に見える張り出したバルコニー部分からたちねぷたの紹介ビデオが見られる時間とのこと。まずはエレベーターで上がります。

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一気に4階までエレベーターで上がると、おお~!!!さっきのたちねぷたの頭頂部が見える~!!!こんなに四方八方、上から下から見学できるなんて、素晴らしい工夫じゃないですか!

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ちょっと角度を変えると、足の先まで見えます。履いているのがちょっとスニーカーっぽいけど(笑

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ぐるりと下りて来るとバルコニー席があります。向かいの白いスクリーンに紹介ビデオが映し出されるという仕組み。徐々に目線が変わってくるところが面白い。剣を向けているのがバルコニー席というところがまたニクい演出ですね。

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バルコニー席にいると睨まれている感じがして、ちょっと怖いです。でも、紹介ビデオのあいだは、ねぷたの明かりも消されるので大丈夫。集中して見ましょう(笑

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たちねぷたは、市内の豪商や集落などで競って作られ、明治から大正時代にかけて次第に巨大化していったそう。しかし、電柱が市街地を張り巡らせるようになるに伴って低形化し、やがてたちねぷたそのものが作られなくなり、作り方すらわからなくなっていきました。

1993年(平成5年)、市内のあるご家庭で先祖の遺品の整理をしていたところ、明治大正期の立佞武多の設計図の一部と写真が発見され、この設計図を元に復活させることになったんだそうです。

有志のボランティアの手で3年後、80年ぶりに復活したたちねぷたは、岩木川河川敷で運行したあと、古習に倣い火が放たれ昇天させられています。灯籠ですから、精霊の送り火とされる習わしだったということですね。

さらに2年後、五所川原市立佞武多の支援を決め、夏まつりで運行されるようになりました。電線の地中埋設や制作・保管場所としての立佞武多の館の建設と、自治体を挙げての惜しみない後押しです。たちねぷたは毎年一基ずつ作られ、3年で引退させていくというサイクルです。従って、お祭りで稼働するのは3基。

こちらは2018(平成31年)制作の神武天皇。正式名称は「稽古照今 神武天皇、金の鵄を得る(けいこしょうこん じんむてんのう、きんのとびをえる)」。な、ながい。

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スロープでぐるぐる回れば背面も見えます。毎年ひとり図案を描く人が決められ、20名ほどのスタッフで制作されるそうです。

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正式名称に出てくる金鵄(きんし)は、日本書紀に登場する、神武天皇による日本建国を導いた金色の鵄(とび)のことです。日本最初の天皇となる神武天皇は高千穂宮を都としていましたが、もっと豊かで暮らしやすい国にするために、東へ向かって進みます。その途上、大和の実力者である長髄彦(ナガスネヒコ)と戦って勝てずにいるとき、金色の鵄が神武天皇の持つ弓の先に舞い降り、助けたという話です。そのシーンが枠組みの中に描かれていますね。

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肩にしっかり金鵄が乗って、力を与えているところですね。鵄はちょっと小さい丸眼鏡のをかけているようにも見えますけど(笑

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その神武天皇に相対しているのが、コロナ禍で制作が中断され2年ぶりの新作となった(しばらく)歌舞伎十八番のひとつとして知られる演目「暫」を題材に、主人公が「しばらく~」の一声で現れ、公卿とその家来たちの悪事を暴き大見得を切る場面を表現しています。五輪開催に向け、日本の伝統芸能をアピールしようという狙いだったそう。

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今年もお祭りは中止されましたが、代わりに10月9・10日に従来の運行形式ではなく特別展示として市中で明かりを灯してお披露目されました。最終の組み立てがYouTubeにアップされていたので、是非ご覧ください。


www.youtube.com

 

は、上から見ると迫力があるのですが、下ってくると徐々に力強さが足りないような気がしてしまいます。

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これぐらいドアップだと悪くないのですが、神武天皇の迫力と比べるとどうしても見劣りしてしまうと言ったら酷でしょうか。背後の写真がまったく残っていなかったので、印象に残らなかったのだろうと思います。

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ただ、配置場所も気の毒だったかもしれません。通路に白い鬼が見えますが、これがもうド迫力なんです。

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通路に飛び出すかのように配置されている鬼の顔と手。

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続く足も巨大。この足だけでものすごい躍動感が感じられます。かわいそうに、暫。来年になると新しいたちねぷたができるので、展示される位置も変わることでしょう。

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こちらは2019年(令和元年)制作のかぐや竹取物語かぐや姫が涙を流しながら月へ帰っていく様子を描いたものです。

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こちらもやっぱり儚い女性なので、インパクトという点では神武天皇に劣ります。でも、どれもインパクトが強いと結局印象が薄れてしまうので、ちょうどいいバランスだったかもしれません。

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お祭りで見上げると、まさに月へ帰っていくかぐや姫の幻想的な姿が想起されるような気がしますね~

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そして、かぐやの素晴らしいところは細部が美しいところ。色鮮やかで豪華。かぐや姫の身分の高さが感じられますね。

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別れを惜しんでいるはずのおじいさんとおばあさんの姿がちょっとコミカルなところも笑えます。

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たちねぷたをみながらスロープを降りていく壁際には、制作過程の紹介や歴代のたちねぷたが紹介されています。コロナ禍でなければ、制作現場を見られる部屋もあるようですし、最上階にはレストランもあります。

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毎年、前年の10~11月ごろに次年度のたちねぷたが発表されるようなので、今年もそろそろではないでしょうか。楽しみです!

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なんとか3基一緒に撮りたかったのですが、巨大すぎて全貌は無理でした。ちなみにどの基にも「漢雲」と書かれているのですが、「うんかん」と右から読み、天の川のことを指します。

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展示室を出ると、お土産物も揃っています。

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青森の名産品も揃っていますが、私はたちねぷたに圧倒されてボーっとしていたので、通り過ぎて終わり。期待以上のたちねぷた

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おススメするとすれば、こちらの絵葉書かなと思います。ビニールシートに入ったまま撮ったので白っぽいですが、真っ暗な夜空に映えるたちねぷたが感じられるので、誰かに出せばインパクトのあるお便りになるに違いありません。

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その他のねぷたの展示もあります。こちらはやぐらが組まれているので、笛や太鼓をのせて曳くんでしょうか。毎年、たちねぷた五所川原を故郷とする(正確には合併前の金木町)吉幾三さんが歌う立佞武多という歌で開始されるそうです。

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23mものたちねぷたは3基ですが、会社や学校、地域などの有志が制作するねぷたも参加するそう。

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サイズは小さくても、灯りを入れると美しいねぷたはどれも映えると思います。

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最後に。立佞武多はどこから出陣するでしょう?

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パンフレットに載っていた画像をご覧いただくとわかるように、上の写真の左側が開くようになっているんです。

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スロープを下っているとこの扉が開いて立佞武多が出陣しますと書かれていたのですが、いまひとつイメージが湧いていませんでした。スロープのある一箇所が跳ね上げ式になっていて、出陣するときにスロープを上げて通すんですね。

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そして、外へ出されている様子もパンフレットにありました。どれほど大きいか少しはイメージできるでしょうか。でも、実物を見た私でも町中で見る迫力までは想像がつきません。見てみたいなぁ・・・

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五所川原駅から徒歩5分。是非、足を延ばしてわざわざでも見に行ってください。できればお祭りに行けるといいのだけど、泊まるところはすでに予約で埋まっているでしょう。弘前に宿を取って、遠く離れた場所に駐車すれば見学も叶うのかなと想像します。

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駅の近くに昔ながらの果物屋さんがありました。ここからりんごを家へ送っています。送料を払っても見合う価格だったうえに、とても美味しかったです。お土産編で紹介します。

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www.tachineputa.jp

 

ちなみに、立佞武多の館が再開されなかった場合は、一駅向こうの陸奥鶴田にある鶴の舞橋を見に行こうと思っていました。たちねぷたの見学を早くに切り上げればタクシーで見に行くこともできたのですが、16時47分発のリゾートしらかみ6号まで30分ほどしか残されていませんでした。青森県産のヒバの丸太3千本、板材3千枚を使った全長300mの木造三連太鼓橋である鶴の舞橋。この日本一長い木橋もいつか見に行きたいです。

立佞武多の館に興味を持たれた方がいらっしゃいましたら、是非ここも併せて調べてみてくださいね。

 

次回記事はこちら。

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